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労働時間・休憩・休日の適用除外とは?

労働基準法第四十一条の「労働時間に関する規定の適用除外」とは?
労働基準法は、使用者との間に雇用契約を結んだ労働者全てに適用される法律です。この法律は、労働時間、休日、休憩時間等様々な事項に関して規制を行うことで、労働者の保護を図っています。
しかしその反面で、第四十一条において条件に該当する労働者については「労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない。」として規制の適用を除外しています。
第四十一条:この章(第四章)、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
 別表第一第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
したがって、上記に該当する労働者には法定労働時間を超えて労働させ、または法定休日に労働させて残業代を支払わないこと、休憩を与えないこと等で違法を問われることがなくなります。
条文によると、適用除外となるのは、あくまでもこの章(第四章)、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定です。その他の規定が除外されるものではありません。
ただし、第四十一条によっても深夜業に関する規定及び年次有給休暇に関する規定は適用除外にはなりませんので、注意が必要です。
つまり、対象となる労働者が深夜時間帯に勤務した場合には深夜労働の割増賃金を支払わなければなりませんし、年次有給休暇取得の請求があった場合には有給休暇を与えなければなりません。
 
「次の各号の一に該当する労働者」
○別表第一第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
第6号:土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農(林)の事業
第7号:動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
農(林業は除く)畜水産・養蚕の事業に従事する労働者が該当しますが、これはこの種の事業はその性質上天候等の自然的条件に左右されるため、労働時間や休日の規制に馴染まないものとして適用除外とされています。
○事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
「監督若しくは管理の地位にある者」とは、「一般的には局長、部長、工場長等労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるが、名称にとらわれず出社退社等について厳格な制限を受けない者について実体的に判断すべきものである。」と通達されていて、いわゆる一般に言う「管理監督者」について適用除外とされています。管理監督者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定の制限を超えて活動しなければならない企業経営上の必要から適用除外が認められています。
しかし、原則として、よく問題にされるポイントですが、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として適用除外が認められるものではありません。
「機密の事務を取り扱う者」とは、必ずしも秘密書類を取り扱う者を意味するのではなく、「秘書その他の職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であって、出社退社等についての厳格な制限を受けない者である。」と通達されていて、厳格な労働時間管理になじまない者として適用除外とされています。
 
○監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
監視又は断続的労働に従事する者については、通常の労働者と比較して労働密度が疎であり、労働時間、休憩、休日の規定を適用しなくても必ずしも労働者保護に欠けるところがないことから適用除外が認められています。ただし、監視断続的労働はその態様が様々であることから無条件に適用除外とすることは労働条件に著しい影響を及ぼす可能性が考えられるので、適用除外とするためには行政官庁の許可が必要とされています。
通達においては、「監視に従事する者は原則として一定部署に在って監視するのを本来の業務とし常態として身体又は精神緊張の少ないものの意であり、その許可は概ね次の基準によって取り扱うこと。」
  • 火の番、門番、守衛、水路番、メーター監視等の如きものは許可すること。
  • 犯罪人の看視、交通関係の監視等精神緊張の著しく高いものは許可しないこと。
  • プラント等における計器類を常態として監視する業務は許可しないこと。
  • 危険又は有害な場所における業務は許可しないこと。
とされています。
また、断続的労働とは、作業自体が本来間欠的に行われるもので、したがって、作業時間が長く継続することなく中断し、しばらくして再び同じような態様の作業が行われ、また中断するというように繰り返されるものをいいます。
通達では、「断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によって取り扱うこと。
  • 修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機するものは許可すること。
  • 貨物の積卸に従事する者寄宿舎の賄人等については、その者の勤務時間を基礎として作業時間と手待時間折半の程度まで許可すること。実労働時間の合計が八時間を超えるときは許可すべき限りではない。
  • 鉄道踏切番については、一日交通量十往復程度まで許可すること。
  • 汽罐夫その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。
とされています。
以上、労働時間、休日、休憩の規定が適用除外される労働者として、事業の種類、労働者の地位、労働の態様が法定労働時間や週休制を適用するのに適さないものとして1号から3号の3種が対象とされています。
適用除外に関する留意点
○労基法上の管理監督者に該当するか
会社内で管理職とされている労働者であっても、それが直ちに労基法上の「管理監督者」に該当するとは言えません。この点が最も大きな留意点です。
管理監督者は労基法の労働時間、休憩、休日の規制の適用を受けないため、時間外労働、休日労働に対する手当(残業手当や休日出勤手当)の支払いが不要になりますので、実際に当該手当を支払っていない場合に、その実態から管理監督者に該当しないと判断され管理監督者性が否定されたときには、賃金の未払い問題が発生します。その場合過去に遡っての賃金を一度に請求され、また複数人からの請求があった場合には×複数倍の賃金を請求されるおそれがありますので、大きなトラブルに発展します。
そのようなトラブルを避けるためには、管理監督者に該当する労働者の範囲を管理監督者に該当するか否かの判断基準に則って適正に判断しなければなりません。
では、その判断基準とはどのようなものなのでしょうか。行政実務上また裁判例上もその判断にあたり、対象労働者の管理監督者性について、①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限が認められていること(職務内容・責任及び権限の程度)②実際の勤務態様における自己の労働時間に関する裁量権があること③一般の従業員よりも高いその地位と権限にふさわしい賃金等の待遇を与えられていることの3つの要素を総合的に勘案して判断しています。
したがって、労働者を管理監督者として労働時間等の適用を除外するにあたっては、部長や課長だからというだけで安易に判断するのではなく、上記判断基準に則っているかについてしっかりと検討し適正に運用することが重要です。
○監視又は断続的労働に従事するものに関して行政官庁の許可を受けているか
労働基準法第四十一条第三号では、行政官庁の許可を受けたものが適用除外とされていますので、監視又は断続的労働という労働の態様のみを以て適用除外は認められません。
行政官庁の許可を受けるという要件を満たしていないため、適用除外の効果は発生しません。必ず行政官庁の許可を受けることが必要です。
○安全衛生法上の労働時間の状況の把握義務
労働安全衛生法はその第六十六条の八の三において、「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」と規定していますので、事業者は労基法第四十一条の適用除外の対象となる労働者の労働時間についても把握する義務があります。条文に規定されている「厚生労働省令で定める方法」*1によって労働時間を把握しなければなりません。
*1:労働安全衛生規則第五十二条の七の三 法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
○労働者の安全への配慮
労働契約法第五条には、「労働者の安全への配慮として、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されています。
この安全配慮義務は労働契約締結に伴って信義則上当然に企業が負うことになる義務で、労働者の生命・身体の安全や心身の健康が阻害されることがないように配慮する義務のことです。労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められています。
労働基準法第四十一条によって労働時間、休憩、休日の規定が適用除外されているからといって、働かせすぎは禁物です。労働者の安全への配慮を怠った場合には、損害賠償請求をされる可能性があります。
2025年09月12日 15:33

労働基準法における休業手当とは?

休業手当とは?
「休業」とは労働者が労働契約に従って労働の用意をし、かつ労働の意思をもっているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、又は不可能となった場合をいい、事業の全部又は一部が停止される場合にとどまらず、特定の労働者に対して、その意思に反して、就業を拒否するような場合も含まれます。なお、休業は全一日の休業であることは必要でなく、一日の一部を休業した場合も含むとされています。
そのような休業に対して支払われる労働基準法に規定される休業手当とはどのようなものなのでしょうか。
労働基準法はその第二十六条で、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と規定しています。
これが休業手当ということになるのですが、条文にあるとおり「使用者の責めに帰すべき事由」による休業が支給の要件であって、労働者自身の都合(私傷病等)による休業*1に対しては支給されません。
したがって、休業手当とは、会社都合によって労働者を休業させ又は労働の提供ができなくなった場合の収入の減少を保障するために労基法が会社に支払いを義務づけた賃金のことをいいます。
*1:業務上の傷病による休業に対して支払われる「休業補償」とは異なる制度です。

休業手当が支払われる要件
以上を総合すると、休業手当が支払われる要件として以下の三つが挙げられます。
①使用者の責めに帰すべき事由による休業であること
会社の業績悪化や急な設備故障等、業務を行うことができなくなった理由が会社側にあり、労働者の都合によるものではない、いわゆる会社都合による休業であることが必要です。
②労働者本人に労働の意思と能力があること
休業とは、労働者が労働の用意をし、労働の意思をもっているにもかかわらず業務を行えなくなった状態が前提ですので、労働者の私傷病による場合や個人的理由によるものの場合には、労働の意思と能力があるとはいえないため、休業手当は発生しません。
③休業日が休日ではないこと
休業とは、労働契約上労働義務のある日に労働ができなくなることですので、休業手当が発生するのは労働義務のある日に限られます。会社が就業規則等で休日と定めた土日祝日等は元々労働義務のない日であるため、休業手当は発生しません。
通達においても「労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない。」とされています。
 
「使用者の責めに帰すべき事由」の意義
休業手当が支給される要件は、上記のとおり①~③があります。その判断において、②③は容易なのですが、①に関するその判断は難解です。
休業手当が支払われる要件である「使用者の責に帰すべき事由」とは、学説や裁判例によると、不可抗力によるものは含まれないが、使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべきものよりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当であるとされています。また、経営者として不可抗力を主張し得ない一切の場合を包含するものとの表現もあります。
不可抗力とは,①事業の外部より発生した事故であること,②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故であること,の二つの要件を備えたものをいいますが、総合的に判断すると不可抗力によるものの他は、使用者の責に帰すべき事由に属するものということになるでしょう。 

休業手当が支給されるケース・支給されないケース
このように「使用者の責めに帰すべき事由」の判断は難しいものですので、参考に休業手当が支給されるケースと支給されないケースの具体例を列挙します。
○休業手当が支給されるケース
 ① 生産調整のために一時休業する場合
 ② 機器の故障による操業停止や検査のために休業する場合
     ③ 「親会社からのみ資材資金の供給を受けている下請け工場が、親会社自体が 経営難のため資材資金獲得に支障をきたし、休業した場合は、使用者の責に帰すべき休
   業に該当する」通達より抜粋
  ④一時帰休させる場合
     ⑤労働組合が争議行為をしたことにより、同一事業場の当該労働組合員以外の労働者の一部が労働を提供し得なくなった場合に、(その程度に応じて労働者を休業させる
  ことは差支えないが)、その限度を超えて休業させた場合には、その部分については、使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する。」通達より抜粋
  ⑥解雇予告期間中、自宅待機等を命じて休業させる場合 

○休業手当が支給されないケース
 ①天災事変によって休業する場合
 ②「労働者側の争議行為に対抗する使用者側の争議行為としての作業所閉鎖は、これが社会通念上正当と判断される限り、その結果労働者が休業のやむなきに至っても、
          休業手当支払義務はない。」通達より抜粋
    ③「労働組合が争議行為をしたことにより、同一事業場の当該労働組合員以外の労働者の一部が労働を提供し得なくなった場合に、その程度に応じて労働者を休業させる
         ことは差支えない(が、その限度を超えて休業させた場合には、その部分については、使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する。)」通達より抜粋
 ④「労働安全衛生法第66条の規定による健康診断の結果に基づいて使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、使用者は労働の提供のなかった限度において賃金を
   支払わなくても差支えない。(但し、使用者が健康診断の結果を無視して労働時間を不当に短縮もしくは休業させた場合には、法第26条の休業手当を支払わなければ
   ならない場合の生ずることもある。)」通達より抜粋

休業手当の計算方法(具体例)
 以下の場合を例に休業手当の計算を行います。
Ex)賃金締め支払:末締め翌月20日支払い、休業期間:4/10~4/30、
休業期間中の所定労働日数:14日間
  給与:
 
 期  間 総 日 数 支 給 日 支給総額
       
1/1~1/31 31 2/20 240,000
2/1~2/28 28 3/20 230,000
3/1~3/31 31 4/20 210,000
 合  計 90 - 680,000
 
休業手当の金額は、条文によると「平均賃金の百分の六十以上の手当」とされていますので、まず平均賃金を算出する必要があります。
 ○平均賃金=休業期間初日の直前3か月間の賃金の総額(総支給額)÷直前の3か月間の総日数(総日数)で算出します。(詳細は別記事)
680,000÷90日=7555.55555≓7555.55(銭未満切捨て)
 
次に平均賃金を基礎に休業手当金額を算出します。
○休業手当=平均賃金×60%×休業日数(14日間)で算出します。
  1. 55×60%×14=63466.62≓63,467円以上(円未満四捨五入)
 
例の場合には、14日間の休業に対して、63,467円以上の休業手当を支払わなければならないということになります。
2025年09月03日 17:41

労働基準法における減給の「制裁規定の制限」について

○減給の制裁
減給の制裁とは、職場規律に違反した労働者に対する制裁として、本来労働者が受ける賃金を減額する措置のことです。労働基準法においては「労働者に対して減給の制裁を定める場合においては」と「制裁」という語句を使用していますが、一般的には「懲戒」という語句が使用されていて、なじみがあるのではないかと思います。
これに関しては、「懲戒」と「制裁」は同義である旨通達されていますので、同義に扱うことでよいでしょう。
それでは「懲戒」とは何かというと、使用者が企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために行うもので、従業員の企業秩序違反に対する制裁罰としての労働関係上の不利益措置のことを懲戒処分といいます。使用者が懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒の種類、程度及び事由を定め、労働者に周知しておかなければなりません。
懲戒処分には一般的には以下のような種類があります。

 1.戒告:始末書の提出を求めず注意を言い渡すこと
 2.譴責:始末書を取り注意を言い渡すこと
 3.減給:労働者が受ける賃金を減額すること
 4.出勤停止:一定期間出社させず就労を禁止し、賃金の支払いを行わないこと
 5.降格(降職):役職、職位、資格等級を引き下げること
 6.諭旨解雇:本来は懲戒解雇に該当するものの、情状が認められる場合に一定期間内に退職届を提出することを勧告し、提出があれば退職とし、期間内に退職届が提出され
       ない場合は懲戒解雇とすること
 7.懲戒解雇:制裁罰として解雇すること。一般的に退職金が不支給とされ、再就職活動にも不利益がある
このように懲戒にはいくつかの種類があるのですが、労働基準法が規制しているのは解雇に関することを除くと、第九十一条の「(減給の)制裁規定の制限」です。
 
解雇や減給以外の懲戒に関しては、使用者は人事考課や人事異動において大きな裁量を有しているとされていますので個別の規制は定められていませんが、解雇や減給については、労働者の生活を脅かすことに直結することから、個別に規定を定めていると言えます。実際に「就業規則に定める制裁は減給に限定されるものでなく、その他譴責出勤停止即時解雇等も制裁の原因たる事案が公序良俗に反しない限り禁止する趣旨ではない」と通達されていて、懲戒は減給に限らず数種類あるので使用者において適正な範疇で行うことを促しています。
特に減給に関する制裁規定の制限については、労働の結果いったん発生した賃金債権を減額するものであることから、その額があまりに多額であると労働者の生活を著しく脅かす要因になるおそれがあるため、それを防止するという趣旨で次のように規定されています。

(制裁規定の制限)
第91条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、①一回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、②総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
①一回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
「一回の事案に対しては、減給の総額が平均賃金の1日分の半分以内でなければならないという意味である。」と通達されていて、一回の事案について平均賃金の1日分の半額ずつ何日にもわたって減給してよいという意味ではありません。

②総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない
「一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金総額の10分の1以内でなければならないという意味である。」との通達があり、もしこれを超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合には、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばさなければなりません。また「一賃金支払期における賃金総額が欠勤、遅刻等により減額されたため僅少となった場合であっても、僅少となった現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならない」との通達があり、僅少となった賃金総額を基礎として10分の1を計算しなければなりません。

○制裁規定の制限に拘束されないで減給が行われるケース
1.労働者との合意に基づく減給
 労働契約法第八条は「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と規定し、労働条件は契約締結の当事者である労
 使の合意によって変更できると定めています。
 労使の合意に基づく減給の場合、懲戒処分による減給ではないことから、制裁規定の制限が適用されません。

2.降格による減給
降格には、「人事考課によるもの」と「懲戒処分によるもの」があり、前者に伴う減給は制裁規定の制限は適用されませんが、後者に該当する減給については、適用されることになります。
前者について通達は、「交通事故を起こした自動車運転手を助手に降格し、賃金を助手のそれに低下せしめるとしても、交通事故を起こしたことが運転手として不適格であるから助手に格下げするものであるならば、賃金の低下は、その労働者の職務の変更に伴う当然の結果であるから労基法第91条の制裁規定の制限に抵触するものではない。」としています。
これに対して後者について通達は、就業規則における「将来にわたって本給の10分の1以内を減ずる」と定めた降給の制裁について、「降給が従前の職務に従事せしめつつ、賃金額のみを減ずる趣旨であれば、減給の制裁として労働基準法第91条の適用がある。」としています。

3.出勤停止に伴う減給
出勤停止とは、就業規則に規定された懲戒行為をした労働者を一定期間出社させず賃金の支払いを行わないことです。出勤停止期間中の賃金が支払われないことになりますので、減給に比して多額の賃金を減額されることになりますが、制裁規定の制限は適用されません。
通達においても、「出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であって、通常の額以下の賃金を支給することを定める減給の制裁に関する労働基準法第91条の規定には関係ない。」とされています。
それでは出勤停止期間としてはどのくらいの期間が妥当なのでしょうか。法令においては期間の上限・下限等の定めはありませんので、その期間は使用者において定めることになります。しかし、過度に厳しい期間を処分として下してしまうと、裁判等になった場合には「無効」とされるリスクがありますので、注意が必要です。
通達では、「ただし、出勤停止の期間については公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である。」とされていますし、労働契約法においても第15条で「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」とありますので、十分に検討しなければなりません。

4.遅刻・早退・欠勤控除による減給
遅刻・早退および欠勤によって、不就労時間に相当する賃金を控除することは制裁規定の制限は適用されません。ただし、不就労時間を超える減給は、制裁規定の制限の適用を受けることになります。
通達においても、「遅刻、早退又は欠勤の場合、その時間については賃金債権が生じないものであるから、労働の提供のなかった時間に相当する分の減給は、労働基準法第91条にいう減給の制裁としての制限を受けない。しかし、遅刻早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、第91条に定める減給の制裁に関する規定の適用を受ける。」とされています。

以上のように、職場規律に違反した労働者に減給という懲戒処分を下す際には、法令によって制限が課されています。違反者への制裁だからといって、使用者の裁量によって自由にできるものではありませんので、慎重に行うことが必要です。
 

 
2025年08月22日 11:01

労基法規定の手当・補償の金額計算には平均賃金を使います

平均賃金とは、労働基準法に定められた手当てや補償等の支払いを行う場面において、算出される労働者の通常の賃金額に準じた金額のことです。
平均賃金を算定する場面として、労働基準法は下記の5つの場面を規定しています。そして平均賃金はそれらの金額を算定する際の基礎として用いられるものです。
  • 第二十条:解雇予告手当(労働者を解雇する場合の予告期間に代わる手当)予告期間に応じて平均賃金の30日分以上 ②第二十六条:休業手当(使用者の責めに帰すべき休業中の賃金)休業1日について平均賃金の60/100以上③第三十九条:年次有給休暇中の賃金(有給休暇を取得した日について支払われる賃金)休暇1日あたり平均賃金相当額④第七十六条、七十七条、七十九条~八十二条:災害補償(労働者が業務上負傷し若しくは疾病にかかり、又は死亡した場合の補償)休業補償 休業1日あたり平均賃金の60/100、障害補償 障害の程度に応じて平均賃金×一定の日数、遺族補償 平均賃金×1000日、葬祭料 平均賃金×60日、打切補償 平均賃金×1200日、分割補償 平均賃金×一定の日数 ⑤第九十一条:減給の制裁の制限額(制裁として、労働者の賃金を減給する場合の限度額) 減給1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
上記の手当、補償等は、いずれも労働者の生活を保障するという趣旨であることから、平均賃金は労働者の通常の生活資金をありのままに算定することが基本原則とされています。
この基本原則に基づいた金額を算出するために労働基準法は平均賃金の計算方法を定めています。
 
平均賃金の計算方法:算定事由発生日*1以前三か月間*2における賃金の総額*3をその期間の総日数*4で除して算定することとされています。
<計算式>算定事由発生日以前三か月に支払われた賃金の総額÷その期間の総日数
なお、賃金締切日がある場合は、算定事由の発生した日の直前の賃金締切日から起算した三か月間を取って算定します。
*1:解雇予告手当⇒労働者に解雇の予告をした日、休業手当⇒休業日(休業が二日以上の期間にわたる場合は、最初の日)、年次有給休暇中の賃金⇒休暇を与えた日(休暇が二日以上の期間にわたる場合は、最初の日)、災害補償⇒死傷の原因たる事故発生の日又は診断によって疾病の発生が確定した日、減給の制裁の制限⇒減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日
*2:事由の発生した日の前日から遡る三か月間であって、発生日は含まれない。なお、三か月は、暦日による三か月をいう。Ex)10/15事由発生日の場合、10/14~7/15の三か月間で92日となる。
*3:労基法第十一条に規定する賃金のすべてが含まれる。「第十一条:この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」
*4:平均賃金の算定期間となる三か月間の総暦日数であって、その期間中の労働日数ではない。
 
平均賃金は、原則として算定事由発生日以前三か月間における賃金の総額をその期間の総日数で除して算定するのであり、出勤日数に左右されない月給制によって賃金が支払われている場合には平均賃金に大きな変動はないが、賃金が日給制、時間給制又は出来高払制その他の請負制よって計算される場合で、その三か月間に欠勤が多いときなどは平均賃金も低額となり、労働者の生活資金をありのままに算定するという平均賃金の趣旨が失われることになります。
このような場合のために賃金の一部又は全部が日給制、時間給制又は出来高払制その他の請負制によって定められている場合には、最低保障額が定められています。
その最低保障額の計算方法は、「Ⓐ賃金が労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十」、「Ⓑ賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前記Ⓐの金額の合算額」、Ⓐ又はⒷと原則どおり計算した金額とを比較していづれか高い金額を平均賃金とすることとされています。
 
平均賃金の算定期間である三か月間に以下に該当する期間がある場合には、算定期間からこれらの期間中の日数、賃金の総額からこれらの期間中の賃金を、それぞれ除外し、残余の期間の日数と賃金額で平均賃金を算出します。
    ①業務上の傷病による休業期間
             ②産前産後の休業期間
             ③使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
             ④育児休業及び介護休業期間
             ⑤試みの使用期間
仮にこれらの期間及びその期間中の賃金を除外しないこととすると、平均賃金が不当に低くなることがあるため、その配慮から規定されているものです。
 
平均賃金を算定するに当たって、賃金総額に以下の賃金は参入しません。
①臨時に支払われた賃金
臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且非常に稀に発生するものをいう。
②三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
賃金の計算期間が三か月を超えるか否かによって定まるものであって、例えば年2回6か月ごと(三箇月を超える)に支払われる賞与等が該当するが、同じ賞与であっても、例えば四半期ごと(三箇月を超えない)に支払われる賞与は「賃金総額」に参入する。
③通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの
通貨以外のもので支払われた賃金とは、いわゆる実物給与のことであるが、実物給与のうち一定の範囲に属しないものは賃金総額に参入されない。つまり一定の範囲に属するものは参入される。では、一定の範囲に属する実物給与とは、労働基準法施行規則第二条に規定される「法令又は労働協約の別段の定めに基づいて支払われる通貨以外のもの」のことである。したがって、法令又は労働協約で定められていない実物給与が賃金総額に算入されないということになる。
仮にこれらの賃金を算入することとすると、算定事由発生の時期によって、平均賃金に著しい高低を生じる可能性があるための措置です。
最後に平均賃金計算の具体例について記載しますので、ご参照ください。
 
 
 
 
【12/26~1/25までの間、15日の勤務予定があったのに、1/6、7の2日間、使用者側の都合によって休業させた(他は通常勤務)場合 休業手当の算定(日給制)】
基本給日額9,600円、通勤手当7,000円、賃金締切日は毎月25日
期間 月分 暦日数 労働日数 基本給(日額) 通勤手当(月額) 合計
9/26~10/25 10 30 17 163,200
 
7,000 170,200
10/26~11/25 11 31 9 86,400 7,000 93,400
11/26~12/25 12 30 15 144,000 7,000 151,000
合計   91 41 393,600 21,000 414,600
※算定事由発生日は休業させた初日である1月6日。賃金締切日が25日のため直近の締切日である12月から11月、10月の三か月間を対象とする。
<平均賃金の計算>
         ①原則:414,600円÷91日=4,556.043・・・≓4,556円04銭(銭未満切捨て)*1
   ②最低保障: 月によって支払ったもの21,000円÷91日≒230円76銭*1                   
                                    日によって支払ったもの393,600÷41日×0.6=5,760円00銭
                                   月+日5,990円76銭
             ①②の比較:高い方は②のため、5,990円76銭が労働者の平均賃金となる。
        *月給制の場合は最低保障額との比較はなく、①で算定する。
         ③休業手当の計算:5,990円76銭×0.6×2日=7,188.912≒7,189(円未満四捨五入)
                                             支払額7,189円以上。
 
端数処理について
*1:通達「一日の平均賃金の算定に当たり、銭未満の端数を生じたる時はこれを切捨て、各種補償等においては右に所定日数を乗じてその総額を算出する。」
*2「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に円未満の端数は四捨五入と定められている。
 
 
2025年08月08日 15:42

令和7年成立「年金制度改正法」主な改正点②~在職老齢年金制度の見直しと厚生年金保険等の標準報酬月額上限引上げ~

令和7年5月16日「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(年金制度改正法)が国会提出され、6月13日に成立しました。
この法律は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るための公的年金制度の見直しが行われています。
既投稿済の記事の続編になりますので、ご確認ください。
主な改正内容である「在職老齢年金制度の見直し」及び「厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ」について記載します。
在職老齢年金制度とは、年金を受給しながら働く高齢者について、賃金と老齢厚生年金の合計が基準を超える場合に老齢厚生年金の支給を減らすことで、一定額以上の収入のある高齢者には年金制度の支え手に回ってもらうという観点から考案された仕組みで、納付した保険料に応じた給付を受けられることが原則である社会保険においては例外的な仕組みとなっています。
今回の改正では、在職老齢年金制度に適用されていた上記基準が、月50万円から62万円に引上げられます。(2026年4月から)
現行の制度では、賃金と老齢厚生年金の合計が50万円(2024年の基準)を超えると、超えた分の半額の年金が支給停止となるのですが、改正によって、賃金と老齢厚生年金の合計が62万円に達するまで在職老齢年金制度による影響を受けないということになります。
具体的には、賃金(ボーナス含む年収の十二分の一)が45万円+厚生年金額が10万円=55万円の高齢者の場合、現行の基準だと基準を超過した5万円の半額つまり2万5千円が支給停止となり厚生年金額は7万5千円となりますが、改正後基準だと基準を超過しないため支給停止されることなく満額の10万円が支給されることになるのです。
これにより、働き続け、また年金が減らないよう時間を調整して会社等で働くことを希望する高齢者のニーズに適応することができる仕組みになるということです。
高齢者の活躍による人手不足の解消や在職老齢年金制度が高齢者の就業調整や労働参加を妨げるといった労働抑制防止の効果が期待されます。
次に厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについてです。
標準報酬月額とは、日本の健康保険・厚生年金保険(社会保険)における概念で、被保険者が受ける給与を標準報酬月額等級表の区分にあてはめて給与額の等級を決定する給与額に準じた額のことです。この標準報酬月額は、厚生年金制度において保険料額、将来の厚生年金の受給額等の算出根拠となるもので制度の根幹を形成する大切なものです。
現行の厚生年金制度では、この標準報酬月額等級は第1等級(88千円)~第32等級(650千円)の32等級に区分されており、報酬月額が635,000円以上の被保険者の場合には第32等級の650千円の最高(上限)等級に該当し、保険料額も給付額も計算上差がないということになっています。
このため、現行の標準報酬月額の上限を超える賃金を受けている被保険者は、実際の賃金に対する保険料の割合が低く、収入に応じた年金を受給できない。つまり賃金に相応しい保険料を納めていないので、相応しい年金を受給できる仕組みになっていないのです。
これを解消し、賃金に応じた保険料を負担することで、現役時代の賃金に見合った年金を受給できる仕組みとするために、厚生年金保険の標準報酬月額の上限を650千円から750千円に引上げることになりました。これが今回の改正内容です。引き上げの時期としては、2027年9月~680千円、2028年9月~710千円、2029年9月~750千円と段階的に引上げられることになっています。
なお、標準報酬月額が現行の上限未満の被保険者の場合は、保険料額及び給付額に対する変更はありません。
 
2025年07月11日 11:19

令和7年成立「年金制度改正法」主な改正点①~被用者保険の適用拡大~

令和7年5月16日「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(年金制度改正法)が国会提出され、6月13日に成立しました。
この法律は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るための公的年金制度の見直しが行われています。
主な改正内容の一つである「被用者保険の適用拡大」について記載します。
被用者保険の適用拡大のポイントは3点です。
まず第一に短時間労働者の加入要件の緩和です。正社員の社会保険への加入は従来から義務となっていましたが、短時間労働者については一定の要件に該当する場合に加入とされていました。この短時間労働者の加入要件について、2016年10月から一定の要件を満たさない場合であっても①被保険者数が常時501人以上の事業所に勤務していること、②週の所定労働時間が20時間以上あること、③雇用期間が1年以上(後に2か月超に改正)見込まれること、④賃金月額が88000円以上あること、⑤学生(昼間)でないことの要件に該当した場合は加入となることとされました。そして①の事業所の被保険者数要件(企業規模要件)は、2022年10月:101人以上、2024年10月:51人以上と徐々に減少となり、加入対象者の幅が拡大され、現行制度では被保険者数51人以上の事業所とされています。
今回の改正では、この企業規模要件がさらに段階的に縮小され、最終的には撤廃となるというものです。併せて④の賃金要件についても撤廃されます。①の縮小・撤廃の時期については、2027年10月:36人以上、2029年10月:21人以上、2032年10月:11人以上、2035年10月:10人以下(被保険者数要件なし)と10年かけて撤廃されるスケジュールとなっています。②の撤廃は全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて法律の公布から3年以内とされています。
これら短時間労働者の社会保険への加入要件の緩和によって、これまでよりも多くの短時間労働者が社会保険へ加入することになります。
第二に個人事業所の適用対象の拡大が予定されています。
現行制度では、法人の事業所で常時従業員を使用するものは社会保険の適用事業所として法律上社会保険に必ず加入する事業所ですが、個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員を使用する法定の17業種*1が適用事業所であり、常時5人未満の従業員を使用するもの及び法定17業種以外の事業所は適用事業所ではなく、法律上必ず加入する必要はない事業所(任意包括適用制度あり)です。
今回の改正では、法定17業種に限らず、常時5人以上の従業員を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大されます。
ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間適用しないとの経過措置が設けられています。
以上、被用者保険の適用拡大に関する改正によって、新たに社会保険への加入となる短時間労働者及び事業主は保険料の追加負担が発生することになります。
そして第三のポイントとして挙げられるのがその負担軽減措置です。
その措置とは、適用拡大の対象となる比較的小規模な企業で働く短時間労働者*2に対し、 社会保険料による手取り減少の緩和、就業調整を減らし、被用者保険 の持続可能性の向上につなげる観点から、3年間、保険料負担を国の 定める割合*3に軽減できる特例的・時限的な経過措置を実施することです。 具体的には、社会保険料は労使折半が原則ですが、この措置の利用を希望する事業主は、法令で定めた負担割合により労使折半を超えて会社が保険料を多く支払い、その分労働者負担分を少なくするというものです。
なおその際、事業主が労使折半を超えて追加負担した保険料相当額を国が支援するという事業主への措置も用意されています。
このような負担軽減措置が実際に負担を被ることになる特に中小事業主や短時間労働者の負担をどれだけ緩和する効果があるのかは定かではありませんが、来るべき適用拡大の波を乗り切るための事前準備を進めておくことが重要です。
*1:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積おろし、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務等を取り扱う士業
*2:対象者は、従業員50人以下の企業などで勤務し、企業規模の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者であって、標準報酬月額が126千円以下である者
*3:・標準報酬月額88千円 労働者負担割合50%→25%
   ・標準報酬月額98千円 労働者負担割合50%→30%
   ・標準報酬月額104千円 労働者負担割合50%→36%
   ・標準報酬月額110千円 労働者負担割合50%→41%
   ・標準報酬月額118千円 労働者負担割合50%→45%
   ・標準報酬月額126千円 労働者負担割合50%→48%
   ・標準報酬月額134千円~ 労働者負担割合50%→50%
    (3年目は軽減措置を半減)
 
 
2025年07月09日 10:46

健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届(定時決定)の届出について

社会保険の保険者(社会保険の運営機関)から算定基礎届(定時決定)の提出についての案内が、そろそろ到着する頃だと思います。
標準報酬月額とは、日本の健康保険・厚生年金保険(社会保険)における概念で、被保険者が受ける給与を標準報酬月額等級表の区分にあてはめて給与額の等級を決定する給与額に準じた額のことです。
この標準報酬月額は、社会保険の制度の保険料額、健康保険の保険給付額、将来の厚生年金の受給額等の算出根拠となるもので制度の根幹を形成する非常に重要なものです。
算定基礎届(定時決定)は、毎年7月1日現在の全ての被保険者について保険者が標準報酬月額の見直しをし、その年の9月以降の標準報酬月額を決定する手続きです。事業主は、その年の4月、5月、6月に支給した給与額を毎年1回届出することで全ての被保険者のその年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額の決定を行います。上記の通り、標準報酬月額は社会保険制度の根幹の仕組みですので正しく届出ることが必要です。また保険料や保険給付といった被保険者に与える影響も大きいことから誤った届出をしてはなりません。社会保険料は労使折半であることから、会社側にとっても負担の増減につながる可能性があるため、誤った届出は会社にも影響があることは言うまでもありません。
このように正しく届出ることが要求される算定基礎届ですが、7月1日現在の全被保険者が対象とはいうものの、6月1日以降に資格取得した被保険者、7月、8月、9月に被保険者月額変更(随時改定、(育児休業終了時変更、産休終了時変更を含む))に該当する被保険者、6月30日の退職者(7月1日資格喪失者)は対象から除かれること、その月の給与を計算する基礎となった日数(支払基礎日数)に17日未満の月がある場合はその月を除外して計算すること、4月、5月、6月の給与計算期間の途中に入社して給与を日割り計算した場合は、支払基礎日数が17日以上あっても被保険者が9月以降に受ける本来の額ではないため、その月の給与は除外計算すること又は4月、5月、6月給与に昇給差額が含まれている場合や低額の休職給を受けていた場合の扱い方等ケースによっては計算方法が原則的な方法と異なる場合もあり、誤りは許されないと言われても判断に迷うこともあるでしょう。例外的なケースは会社のご担当者にとって負担になることと思います。
私たちアクサリス社会保険労務士事務所では、山口県宇部市及び近隣にて算定基礎届の作成と提出代行をスポットで受け付けています。
保険者から算定基礎届の提出案内が到着したものの、他業務に追われて手が付けられず困っている、作成はしてみたものの間違いがないのか心配だというご担当者がおられましたらホームページのお問い合せやお電話等でお気軽にお問い合せください。経験豊富な社会保険労務士が負担を軽減するサポートをいたします。ぜひ私たちの窓口をご利用ください。
 
2025年06月04日 15:07

2025年6月から、熱中症対策が企業に義務化されます。

「熱中症」とは、高温多湿な環境下において、体内の水分や 塩分(ナトリウム等)バランスが崩れる、体温の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称であり、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気 ・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温等の症状が現れます。
熱中症による職場における労働災害は、近年の気温変動の影響で増加傾向にあります。
特に死亡災害については、3年連続で30人以上 となっており、労働災害による死亡者数全体の約4%を占める状況にあるなど、その対策が重要となっています。このような状況下で熱中症の重症化を防止し、死亡災害に至らせないよう、熱中症による健康障害の疑いがある者の早期発見や重篤化を防ぐために事業者が講ずべき措置等について、新たな規定が設けられました。これまでは労働安全衛生規則において、「発汗作業に関する措置」の規定があった程度でしたが、令和7年5月20日に労働安全衛生規則の一部を改正する省令が発出され、労働安全衛生規則に「熱中症を生ずるおそれのある作業」の規定が新設、令和7年6月1日から施行されます。
事業者が講ずべき措置の具体的内容については、以下の3点が挙げられています。
  • 熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備すること。
  • 熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診断又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定めておくこと。
  • 上記体制や手順を当該作業に従事する者に対し周知させること。です。
企業が対策を怠った場合には、企業や代表者等に対し、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がありますので、しっかりと措置することが必要です。
事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときに上記のような措置を講じなければならなりません。
「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)※が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい、必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含むとされています。また、「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業とされています。なお、非定常作業、臨時の作業等であっても上記の条件を満たすことが見込まれる場合は対象となりますし、熱中症を生ずるおそれのある作業に該当しない場合であっても、作業強度や着衣の状況によっては、熱中症のリスクが高まることから、事業者は、規定に準じた対応を行うように努めるよう通達されています。
※WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))の値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(式①又は②により算出)であり、作業場所に、WBGT指数計を設置する等により、WBGT値を求めることが望ましい。また、WBGT 値の測定が行われていない場合においても、気温(乾球温度)及び 相対湿度を熱ストレスの評価を行う際の参考にすること。と通達されています。
<WBGTの算出式>
ア 日射がない場合 WBGT 値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度・・・・・・ 式① イ 日射がある場合 WBGT 値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×気温(乾球温度)・・・・・・ 式②
 
 
2025年05月22日 15:09

最近よく聞く企業の安全配慮義務とは?

企業には安全配慮義務という義務が課されています。最近ニュースで毎日のように報道されている放送局の案件で、時折耳にする言葉だと思いますので、記載します。
安全配慮義務は労働契約締結に伴って信義則上当然に企業が負うことになる義務で2007年に労働契約法が公布されるまでは法律に規定されていませんでしたが、労働契約法第五条によって明文化されたものです。
つまり、従来は労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約の付随的義務として当然に企業が負っていた安全配慮義務が、法律に規定されることによって明確になったものです。
安全配慮義務とは、労働者の生命・身体の安全や心身の健康が阻害されることがないように配慮する義務のことをいい、労働契約法第五条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。
ここでいう必要な配慮とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではありませんが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものであることとされていることから、企業が安全配慮義務を果たすためには、具体的には多くの対策を講じなければなりません。例えば、・職場環境の安全衛生管理・労働環境の整備・災害対策・健康診断やメンタルヘルス対策・ハラスメントやいじめ対策・第三者の故意による行為の防止対策等枚挙に暇がありません。
このことから、完璧な対策は困難またはないと言えるでしょう。起こり得るリスクを定期的に予見・分析することで、対策をアップデートする努力が必要となるでしょう。
では、必要な配慮がされておらず安全配慮義務を怠っていたと判断された場合、企業に問われる責任とはどのようなものなのでしょうか。
それは安全配慮義務違反として、労働者から損害賠償請求をされる可能性です。
安全配慮義務を規定する法律は労働契約法ですが、労働契約法には罰則の規定がないため、同法違反で処罰されることはありません。しかし、労働契約違反を理由として民法の債務不履行による損害賠償または不法行為の使用者等の責任を根拠とする損害を賠償する責任を負うことになります。
過去の裁判例を見てもかなり高額の損害賠償額が課されたものもありますので、企業としては労働者の安全への配慮について日常的に意識しておくことが重要です。
 
2025年02月05日 10:11

健康保険証の新規発行停止とマイナンバーカードの保険証利用に伴う年金機構の対応について

ご存じのとおり令和6年12月2日以降健康保険証の新規発行が停止され、マイナンバーカードを保険証として利用する仕組みに移行されています。
これに伴って、日本年金機構は「マイナンバーカードの新規保険証への移行にともなう対応について」を公表し、これまでとの扱いの変更点を提示しています。
その内容は、保険証の新規発行がされないこと及びマイナンバーカードの保険証利用ができない人には資格確認書が発行されるということと社会保険の手続きに使用する届書の様式変更についてです。
保険証の新規発行停止や資格確認書の発行については既に周知の事項だと思いますが、そのことに関連して社会保険の届書様式が変更になることはあまり取り上げられてこなかったことです。会社の社会保険手続きの担当者には大切なことと思われますので、認識しておく必要があります。
保険証の取扱い変更にともなって変更となる届書様式は、資格取得届と被扶養者(異動)届で、これまで健康保険証を発行するために提出していた届書です。具体的な変更内容は「資格確認書発行要否」のチェック欄が追加されたことです。
これまでであれば、届出すれば無条件で保険証が発行されていましたが、この度の保険証新規発行停止によって、手続きの対象者がマイナンバーカードを保険証として利用できるかどうか確認する必要があるが故に追加されたものです。担当者としては、対象者がマイナンバーカードを保険証として利用可能かどうかについて届書提出の都度本人に確認する手間が増えることになります。
それではどのような人がチェック欄にチェックを付す必要があるのでしょうか。一言では言えばマイナンバーカードを保険証として利用することができない人です。具体的には、①マイナンバーカードを取得していないまたは返納した人、②マイナンバーカードは取得しているものの保険証利用登録をしていないまたは利用登録を解除した人、③マイナンバーカードの電子証明書の有効期限切れの人等が該当するでしょう。
また届出は紙媒体での届出の他、電子申請や電子媒体での申請もありますので、同様の様式変更が行われています。
届書の新様式は既に年金機構のホームページに掲載されていますので、今後は新様式を使用する必要がありますが、やむを得ず旧様式を使用する場合で資格確認書の発行が必要な場合は備考欄に「資格確認書要」と記載して提出することで対応可能です。
ただし公表によると、旧様式での受付は令和7年2月28日で終了する予定とされているため新様式に切り替えなければなりません。
なお、上記は協会けんぽにおけるものであり、健保組合については別途確認が必要です。
 
2025年01月17日 16:02
事務所名 アクサリス社会保険労務士事務所
代表者名 三戸 和洋
所在地 〒755-0004 山口県宇部市草江一丁目10-19-1
アクセス ・JR宇部線草江駅から徒歩10分
・山口宇部空港から徒歩15分
・ときわ公園入口から徒歩20分
電話番号 090-3263-4864
営業時間 9:00〜18:00
定休日 土・日・祝日

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