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労基法規定の手当・補償の金額計算には平均賃金を使います

平均賃金とは、労働基準法に定められた手当てや補償等の支払いを行う場面において、算出される労働者の通常の賃金額に準じた金額のことです。
平均賃金を算定する場面として、労働基準法は下記の5つの場面を規定しています。そして平均賃金はそれらの金額を算定する際の基礎として用いられるものです。
  • 第二十条:解雇予告手当(労働者を解雇する場合の予告期間に代わる手当)予告期間に応じて平均賃金の30日分以上 ②第二十六条:休業手当(使用者の責めに帰すべき休業中の賃金)休業1日について平均賃金の60/100以上③第三十九条:年次有給休暇中の賃金(有給休暇を取得した日について支払われる賃金)休暇1日あたり平均賃金相当額④第七十六条、七十七条、七十九条~八十二条:災害補償(労働者が業務上負傷し若しくは疾病にかかり、又は死亡した場合の補償)休業補償 休業1日あたり平均賃金の60/100、障害補償 障害の程度に応じて平均賃金×一定の日数、遺族補償 平均賃金×1000日、葬祭料 平均賃金×60日、打切補償 平均賃金×1200日、分割補償 平均賃金×一定の日数 ⑤第九十一条:減給の制裁の制限額(制裁として、労働者の賃金を減給する場合の限度額) 減給1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
上記の手当、補償等は、いずれも労働者の生活を保障するという趣旨であることから、平均賃金は労働者の通常の生活資金をありのままに算定することが基本原則とされています。
この基本原則に基づいた金額を算出するために労働基準法は平均賃金の計算方法を定めています。
 
平均賃金の計算方法:算定事由発生日*1以前三か月間*2における賃金の総額*3をその期間の総日数*4で除して算定することとされています。
<計算式>算定事由発生日以前三か月に支払われた賃金の総額÷その期間の総日数
なお、賃金締切日がある場合は、算定事由の発生した日の直前の賃金締切日から起算した三か月間を取って算定します。
*1:解雇予告手当⇒労働者に解雇の予告をした日、休業手当⇒休業日(休業が二日以上の期間にわたる場合は、最初の日)、年次有給休暇中の賃金⇒休暇を与えた日(休暇が二日以上の期間にわたる場合は、最初の日)、災害補償⇒死傷の原因たる事故発生の日又は診断によって疾病の発生が確定した日、減給の制裁の制限⇒減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日
*2:事由の発生した日の前日から遡る三か月間であって、発生日は含まれない。なお、三か月は、暦日による三か月をいう。Ex)10/15事由発生日の場合、10/14~7/15の三か月間で92日となる。
*3:労基法第十一条に規定する賃金のすべてが含まれる。「第十一条:この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」
*4:平均賃金の算定期間となる三か月間の総暦日数であって、その期間中の労働日数ではない。
 
平均賃金は、原則として算定事由発生日以前三か月間における賃金の総額をその期間の総日数で除して算定するのであり、出勤日数に左右されない月給制によって賃金が支払われている場合には平均賃金に大きな変動はないが、賃金が日給制、時間給制又は出来高払制その他の請負制よって計算される場合で、その三か月間に欠勤が多いときなどは平均賃金も低額となり、労働者の生活資金をありのままに算定するという平均賃金の趣旨が失われることになります。
このような場合のために賃金の一部又は全部が日給制、時間給制又は出来高払制その他の請負制によって定められている場合には、最低保障額が定められています。
その最低保障額の計算方法は、「Ⓐ賃金が労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十」、「Ⓑ賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前記Ⓐの金額の合算額」、Ⓐ又はⒷと原則どおり計算した金額とを比較していづれか高い金額を平均賃金とすることとされています。
 
平均賃金の算定期間である三か月間に以下に該当する期間がある場合には、算定期間からこれらの期間中の日数、賃金の総額からこれらの期間中の賃金を、それぞれ除外し、残余の期間の日数と賃金額で平均賃金を算出します。
    ①業務上の傷病による休業期間
             ②産前産後の休業期間
             ③使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
             ④育児休業及び介護休業期間
             ⑤試みの使用期間
仮にこれらの期間及びその期間中の賃金を除外しないこととすると、平均賃金が不当に低くなることがあるため、その配慮から規定されているものです。
 
平均賃金を算定するに当たって、賃金総額に以下の賃金は参入しません。
①臨時に支払われた賃金
臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且非常に稀に発生するものをいう。
②三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
賃金の計算期間が三か月を超えるか否かによって定まるものであって、例えば年2回6か月ごと(三箇月を超える)に支払われる賞与等が該当するが、同じ賞与であっても、例えば四半期ごと(三箇月を超えない)に支払われる賞与は「賃金総額」に参入する。
③通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの
通貨以外のもので支払われた賃金とは、いわゆる実物給与のことであるが、実物給与のうち一定の範囲に属しないものは賃金総額に参入されない。つまり一定の範囲に属するものは参入される。では、一定の範囲に属する実物給与とは、労働基準法施行規則第二条に規定される「法令又は労働協約の別段の定めに基づいて支払われる通貨以外のもの」のことである。したがって、法令又は労働協約で定められていない実物給与が賃金総額に算入されないということになる。
仮にこれらの賃金を算入することとすると、算定事由発生の時期によって、平均賃金に著しい高低を生じる可能性があるための措置です。
最後に平均賃金計算の具体例について記載しますので、ご参照ください。
 
 
 
 
【12/26~1/25までの間、15日の勤務予定があったのに、1/6、7の2日間、使用者側の都合によって休業させた(他は通常勤務)場合 休業手当の算定(日給制)】
基本給日額9,600円、通勤手当7,000円、賃金締切日は毎月25日
期間 月分 暦日数 労働日数 基本給(日額) 通勤手当(月額) 合計
9/26~10/25 10 30 17 163,200
 
7,000 170,200
10/26~11/25 11 31 9 86,400 7,000 93,400
11/26~12/25 12 30 15 144,000 7,000 151,000
合計   91 41 393,600 21,000 414,600
※算定事由発生日は休業させた初日である1月6日。賃金締切日が25日のため直近の締切日である12月から11月、10月の三か月間を対象とする。
<平均賃金の計算>
         ①原則:414,600円÷91日=4,556.043・・・≓4,556円04銭(銭未満切捨て)*1
   ②最低保障: 月によって支払ったもの21,000円÷91日≒230円76銭*1                   
                                    日によって支払ったもの393,600÷41日×0.6=5,760円00銭
                                   月+日5,990円76銭
             ①②の比較:高い方は②のため、5,990円76銭が労働者の平均賃金となる。
        *月給制の場合は最低保障額との比較はなく、①で算定する。
         ③休業手当の計算:5,990円76銭×0.6×2日=7,188.912≒7,189(円未満四捨五入)
                                             支払額7,189円以上。
 
端数処理について
*1:通達「一日の平均賃金の算定に当たり、銭未満の端数を生じたる時はこれを切捨て、各種補償等においては右に所定日数を乗じてその総額を算出する。」
*2「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に円未満の端数は四捨五入と定められている。
 
 
2025年08月08日 15:42
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