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令和8年10月1日からパワハラ防止指針が改正されます。

令和4年4月から全ての企業に適用されている「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(いわゆるパワハラ防止指針)」が改正され、令和8年10月1日から自爆営業やカミングアウトの強要・禁止について、パワハラに該当し得るものとして明記されます。
自爆営業に関しては、会社や上司からの販売目標・ノルマの圧力を背景に労働者が自社の商品やサービスを自費で購入させられるという事例が問題視されたことから、パワハラに該当するものとして指針に明記されることになりました。
また、カミングアウトの強要・禁止に関しては、性的指向やジェンダーアイデンティティは本人の重要な個人情報であり、本人の意思に反して「公表しなさい」と強要することも、「絶対に誰にも言うな」と禁止することも、本人の人格や自己決定を不当に侵害し得るものであることから、これについてもパワハラに該当するものとして指針に明記されることになりました。
いづれの内容も従来の指針の「職場におけるパワーハラスメントの内容」に追記する形で表現されます。
○自爆営業についての記述
2 職場におけるパワーハラスメントの内容
⑺・・・・・・・・・
なお、職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる以下の例については、行為者と当該言動を受ける労働者の関係性を個別に記載していないが、 ⑷にあるとおり、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提である。
イ~ヘ
                                      
なお、職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる以下の例については、行為者と当該言動を受ける労働者の関係性を個別に記載していないが、 ⑷にあるとおり、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提である。
また、商品の買い取り強要等(事業主が労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入させる行為)に関連する言動も、⑴①から③までの要素を全て満たす場合には、職場におけるパワーハラスメントに該当する。
イ~ヘ
と、自爆営業がどのような行為であるかを明確にした上で、パワハラに該当することを明記しています。
 
○カミングアウトの強要・禁止についての記述
2 職場におけるパワーハラスメントの内容
⑺・・・・・・・・・
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ)該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
                          
 
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うことを含む。
 
2 職場におけるパワーハラスメントの内容
⑺・・・・・・・・・
 
ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(イ)該当すると考えられる例
① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
                             
 
② 労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること又は当該労働者が開示することを強要する若しくは禁止すること。
 
4 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容
⑷ ⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置
 ⑴から⑶までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならない。 イ 職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。
                                    
 
なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。
 
以上のように、自爆営業やカミングアウトの強要・禁止について、パワハラの一形態として指針に明記されることになります。これは近年問題視されている従来の典型的なパワハラだけでは捉えにくい行為について、指針上明らかにすることで事業主に周知啓発し、防止措置を講ずることを促すものです。今回の改正によって、ハラスメント対策をより強化しなければならないと言えるでしょう。
2026年08月26日 10:57

短時間・有期雇用労働者に関するルール変更(令和8年10月1日施行)

○短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(短時間・有期雇用労働法)施行規則の改正に伴う短時間・有期雇用労働者雇用に関するルールの変更
令和8年10月1日から、短時間・有期雇用労働者を雇い入れた時の労働条件明示事項として、現行の明示事項に加え、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が必要になります。
短時間・有期雇用労働者の労働条件の明示については、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第六条に規定されていますが、今回の改正は法の改正ではなく、施行規則第二条の改正による変更です。
法第6条(労働条件に関する文書の交付等)
 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項及び第14条第1項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。
施行規則第二条 法第六条第一項の厚生労働省令で定める短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。
一 昇給の有無
二 退職手当の有無
三 賞与の有無
四 法第十四条第二項の規定*1による説明を求めることができる旨
 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
太字:今回の改正事項(新設)、五は従前の規定(四)を繰下げ
 
  
                 労働条件通知書(厚生労働省サンプル)
                                                                年  月  日
          殿
事業場名称・所在地
使用者職氏名
契約期間 期間の定めなし、期間の定めあり(  年  月  日~  年  月  日)
※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合に記入
1 契約の更新の有無
 [自動的に更新する・更新する場合があり得る・契約の更新はしない・その他(   )]
2 契約の更新は次により判断する。
  ・契約期間満了時の業務量   ・勤務成績、態度    ・能力
  ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況
・その他(                              )
3 更新上限の有無(無・有(更新  回まで/通算契約期間  年まで))
【労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合】
本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり) )
【有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合】
無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者)
Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間(   年  か月(上限10年))
Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間
就業の場所 (雇入れ直後)           (変更の範囲)
従事すべき
業務の内容
(雇入れ直後)           (変更の範囲)
 
  【有期雇用特別措置法による特例の対象者(高度専門)の場合】
・特定有期業務(             開始日:    完了日:    )
始業、終業の時刻、休憩時間、就業時転換((1)~(5)のうち該当す
るもの一つに○を付けること。)、所定時間外労働の有無に関する事項
1 始業・終業の時刻等
 (1) 始業(   時   分) 終業(   時   分)
 【以下のような制度が労働者に適用される場合】
 (2) 変形労働時間制等;(  )単位の変形労働時間制・交替制として、次の勤務時間の組み合わせによる。
    始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日     )
    始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日     )
    始業( 時 分) 終業( 時 分) (適用日     )
  (3) フレックスタイム制;始業及び終業の時刻は労働者の決定に委ねる。
(ただし、フレキシブルタイム(始業) 時 分から  時 分、
(終業) 時 分から  時 分、
                     コアタイム         時 分から  時 分)
 (4) 事業場外みなし労働時間制;始業( 時 分)終業( 時 分)
 (5) 裁量労働制;始業( 時 分) 終業( 時 分)を基本とし、労働者の決定に委ねる。
○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条、第 条~第 条
2 休憩時間(  )分
3 所定時間外労働の有無
( 有 (1週  時間、1か月  時間、1年  時間),無 )
4 休日労働( 有 (1か月  日、1年  日), 無 )
休   日
及び
勤 務 日
・定例日;毎週  曜日、国民の祝日、その他(         )
・非定例日;週・月当たり  日、その他(          )
・1年単位の変形労働時間制の場合-年間  日
(勤務日)
毎週(      )、その他(      )
○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条
休   暇 1 年次有給休暇 6か月継続勤務した場合→     日
         継続勤務6か月以内の年次有給休暇 (有・無)
         → か月経過で  日
         時間単位年休(有・無)
2 代替休暇(有・無)
3 その他の休暇 有給(          )無給(          )
○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条
賃   金 1 基本賃金 イ 月給(     円)、ロ 日給(     円)
       ハ 時間給(    円)、
       ニ 出来高給(基本単価    円、保障給    円)
       ホ その他(     円)
       ヘ 就業規則に規定されている賃金等級等
 
 
 
  
 

2 諸手当の額又は計算方法
  イ(  手当    円 /計算方法:           )
  ロ(  手当    円 /計算方法:           )
    ハ(  手当    円 /計算方法:           )
  ニ(  手当    円 /計算方法:           )
3 所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率
    イ 所定時間外、法定超 月60時間以内(   )%
              月60時間超 (   )%
          所定超 (   )%
  ロ 休日 法定休日(   )%、法定外休日(   )%
  ハ 深夜(   )%
4 賃金締切日(   )-毎月 日、(   )-毎月 日
5 賃金支払日(   )-毎月 日、(   )-毎月 日
6 賃金の支払方法(            )
 
  7 労使協定に基づく賃金支払時の控除(無 ,有(   ))
8 昇給( 有(時期、金額等        ) , 無 )
9 賞与( 有(時期、金額等        ) , 無  )
10 退職金( 有(時期、金額等      ) , 無 )
   
   
退職に関す
る事項
1 定年制 ( 有 (  歳) , 無 )
2 継続雇用制度( 有(  歳まで) , 無 )
3 創業支援等措置( 有(  歳まで業務委託・社会貢献事業) , 無 )
4 自己都合退職の手続(退職する  日以上前に届け出ること)
5 解雇の事由及び手続
○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条
 
そ の 他 ・社会保険の加入状況( 厚生年金 健康保険 その他(    ))
・雇用保険の適用( 有 , 無 )
中小企業退職金共済制度
(加入している , 加入していない)(※中小企業の場合)
・企業年金制度( 有(制度名           ) , 無 )
・次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名       担当者職氏名        (連絡先         )
・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
  
部署名       担当者職氏名        (連絡先         )
・その他(                                  )
 
・具体的に適用される就業規則名(         )
※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合についての説明です。
 労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。ただし、有期雇用特別措置法による特例の対象となる場合は、無期転換申込権の発生については、特例的に本通知書の「契約期間」の「有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合」欄に明示したとおりとなります。
 
以上のほかは、当社就業規則による。就業規則を確認できる場所や方法(             )  
             
※ 本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)第6条に基づく文書の交付を兼ねるものであること。
※ 労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします。
 
*1:
第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明) 第二項 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第6条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

この施行規則の改正は、上記法第十四条の規定の実効性を担保するために行われたものといえます。
なお、第十四条中、第六条から前条(十三条)までの規定により措置を講ずべきこととされている事項とあるのは、以下の事項です。
第六条:労働条件に関する文書の交付等、第七条:就業規則の作成の手続、第八条:不合理な待遇の禁止、第九条:通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止、第十条:賃金、第十一条:教育訓練、第十二条:福利厚生施設、第十三条:通常の労働者への転換
 
○短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)の改正~新たに追加された内容~
短時間・有期雇用労働法は、その第八条・第九条において、同一企業内の正社員と短時間・有期雇用労働者との間で、待遇について不合理な相違を設けること、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者について短時間・有期雇用労働者であることを理由として差別的取扱いをすることを禁止しています。同一労働同一賃金ガイドラインは不合理な待遇差・差別的取扱いについて、その考え方や具体例を示したものです。
今回このガイドラインが改正され、令和8年10月1日から適用されます。
第8条(不合理な待遇の禁止)
 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
 
第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第11条第1項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
 
以下に新たに追加された事項について記載します。

△各種手当について
1⃣賞与・退職手当
賞与・退職手当の目的には、労務の対価の後払い、功労報償等のさまざまな目的が含まれます。これらの目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、正社員との間の職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められる可能性があります。
このことがガイドラインの注釈として、次のように明示されました。
・賞与 賞与については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等の様々な性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの相違に応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。
・退職手当 退職手当については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償等の様々な性質及び目的が含まれうるものであるが、通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの相違に応じた均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当しない他の短時間・有期雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該退職手当の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。
2⃣無事故手当
正社員と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、正社員と同一の無事故手当を支給しなければなりません。
これがガイドラインに次のように記載されました。
・無事故手当 通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければならない。
3⃣家族手当
労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、正社員と同一の家族手当を支給しなければなりません。
これがガイドラインに次のように記載されました。
・家族手当 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない。(問題とならない例)
A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返していない等、相応に継続的な勤務が見込まれない有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。
(問題となる例)
A社においては、通常の労働者であるXに対しては家族手当を支給しているが、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYに対しては、家族手当を支給していない。
(注)配偶者の収入要件があるいわゆる「配偶者手当」については、特に女性の短時間労働者の就業調整の要因となっていると指摘されていることから、各事業主において、労使の話合いによって、働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれる。
4⃣住宅手当
住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、正社員と同一の住宅手当を支給しなければなりません。
これがガイドラインに次のように記載されました。
・住宅手当 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない。
(問題とならない例)
A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれる通常の労働者であるXには住宅手当を支給している。一方で、有期雇用労働者であるYには転居を伴う配置の変更が見込まれないため、住宅手当を支給していない。
(問題となる例)
A社においては、転居を伴う配置の変更が見込まれることを理由として、通常の労働者であるXに対し、住宅手当を支給しており、当該変更が見込まれないことを理由として、有期雇用労働者であるYには住宅手当を支給していないが、A社では実態として通常の労働者に対しても、転居を伴う配置の変更を命じていない。
(注)住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについても、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないことに留意すべきである。
5⃣福利厚生施設
通常の労働者と同一の事業所で働く短時間・有期雇用労働者には同一の福利厚生施設の利用を認めなければならないことは改正前にも記載されていましたが、福利厚生施設の料金・割引率等の利用条件について、不合理と認められる待遇差を設けてはならないことが追記されました。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・福利厚生施設 通常の労働者と同一の事業所で働く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の給食施設、休憩室及び更衣室の利用を認めなければならない。
また、福利厚生施設の利用料金・割引率等の利用条件についても短時間・有期雇用労働法第8条の適用を受けるものであり、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
6⃣病気休職
短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならず、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならないことは改正前にも記載されていましたが、正社員に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同一の給与の保障を行わなければならないことが追記されました。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。
さらに、通常の労働者に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の給与の保障を行わなければならない。
(問題とならない例)
A社においては、労働契約の期間が1年である有期雇用労働者であるXについて、病気休職の期間は労働契約の期間が終了する日までとしている。
(問題となる例)
A社においては、通常の労働者であるXには、病気休職期間に係る給与の保障を行っているが、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる有期雇用労働者であるYには、病気休職期間に係る給与の保障を行っていない。
7⃣夏季冬季休暇
短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければなりません。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・夏季冬季休暇
短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。
(問題となる例)
A社においては、繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者であるXに対し、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与していない。
8⃣褒賞
褒賞が「一定の期間勤続した労働者に付与するもの」である場合、正社員と同一の期間勤続した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければなりません。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければならない。

△各種手当・福利厚生に共通する留意事項について
1⃣通常の労働者の待遇引き下げによる待遇差の解消
正社員と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消する際には、正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、短時間・有期雇用労働者の労働条件の改善を図ることが求められます。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・短時間・有期雇用労働法及び労働者派遣法に基づく通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等の目的は、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者の待遇の改善であり、その目的に鑑みれば、当該待遇の相違の解消等に当たっては、通常の労働者の労働条件を不利益に変更することなく、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者の労働条件の改善を図ることが求められる。
2⃣定年後に継続雇用された有期雇用労働者
正社員と定年後継続雇用の有期雇用労働者との間の待遇差が不合理と認められるか否かは、それぞれの待遇の性質・目的に照らして判断されるものであるため、定年後継続雇用の有期雇用労働者であることだけで、直ちに不合理ではないと認められるものではありません。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けるものである。このため、通常の労働者と定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者との間の待遇の相違については、実際に両者の間に職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた待遇の相違は許容される。さらに、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合のそれぞれの待遇について、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない。
3⃣正社員人材確保のための待遇の相違
正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間の待遇の違いの要因として、「正社員人材の確保や定着を図る」等の目的があったとしても、待遇差が不合理と認められるか否かは、その待遇の他の性質・目的にも照らして判断されるものであり、「正社員人材の確保や定着を図る」といった目的だけで直ちに不合理ではないと当然に認められるものではありません。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の待遇に相違がある場合において、その要因として当該待遇を行う目的に「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があったとしても、当該待遇の相違が不合理と認められるか否かは、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の他の性質及び当該待遇を行う他の目的にも照らして適切と認められるものの客観的及び具体的な実態に照らして判断されるものであり、「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があることのみをもって直ちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではない。
4⃣無期雇用フルタイム労働者等へのガイドラインの適用
無期雇用フルタイム労働者について、パートタイム・有期雇用労働法に規定するパートタイム・有期雇用労働者には該当しないが、これらの労働者との労働契約を締結・変更する際の「均衡の考慮」に当たっては、ガイドラインの趣旨が考慮されるべきとされています。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
所定労働時間が通常の労働者と同一であり、かつ、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者については、短時間・有期雇用労働法第2条第3項に規定する短時間・有期雇用労働者に該当しないが、次の事項に留意する必要がある。
1労働契約法第3条第2項の規定により、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされていること。
2均衡の考慮に当たっては、この指針の趣旨が考慮されるべきであること。
5⃣短時間・有期雇用労働法第八条の「その他の事情」の明確化
行政通達で示されている「その他の事情」の具体例(職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行等)をガイドラインにも記載し、事業主が短時間・有期雇用労働者の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決定した場合、当該待遇の相違が不合理と認められる事情とされうることが明確にされています。
このことがガイドラインに次のように記載されました。
・短時間・有期雇用労働法第8条におけるその他の事情については、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではない。職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合や過半数代表者等との間の交渉といった労使交渉の経緯や結果等の諸事情がその他の事情として想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものである。また、事業主が短時間・有期雇用労働法第14条第2項の規定に基づき通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇の相違の内容及び理由について十分な説明を行わなかったと認められる場合や、事業主が待遇の体系に係る議論において短時間・有期雇用労働者の意向を十分に考慮せず一方的に短時間・有期雇用労働者の待遇を決定した場合には、当該事実も短時間・有期雇用労働法第8条におけるその他の事情に含まれ、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められることを基礎付ける事情として考慮されうる。
 
○事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措
置についての指針(雇用管理指針)の改正~新たに追加された内容~
短時間・有期雇用労働法は、その第三条において「事業主は適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。」と規定しています。
雇用管理指針は事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために、短時間・有期雇用労働法で定めるもののほかに必要な事項を定めたものです。
今回この指針が改正され、令和8年10月1日から適用されます。
以下に新たに追加された事項について記載します。
 
1⃣短時間・有期雇用労働者への職業能力開発促進法適用の明示
指針は、事業主が短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たって、適用される法令を列挙していますが、改正により、職業能力開発促進法の適用があることを明示しました。
職業能力開発促進法は、その第四条において、
第四条(関係者の責務)事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うとともに、その労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上を図ることを容易にするために必要な援助を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。
と規定しています。今回の改正により、短時間・有期雇用労働者にも職業能力開発促進法が適用されることが明記されましたので、事業主はこれを認識し、遵守しなければなりません。
第二事業主が講ずべき短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっての基本的考え方
事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たって、次の事項を踏まえるべきである。
<雇用管理指針>
一労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)、職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)等の労働に関する法令は短時間・有期雇用労働者についても適用があることを認識しこれを遵守しなければならないこと。
2⃣公正な評価に基づいた賃金の決定
短時間・有期雇用労働者の賃金を決定するに当たっては、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、昇給に反映する等、公正な評価に基づき決定することが望ましく、例示として短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で共通する職務等に応じ、共通する賃金制度または評価項目を設けることが指針に新設されています。
<雇用管理指針>
第二 三 短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、昇給に反映する等、公正な評価に基づき賃金を決定することが望ましいこと。例えば、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で共通する職務等に応じ、共通する賃金制度又は評価項目を設けることが考えられること。
3⃣短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件等に関する記載
短時間・有期雇用労働法ではその第七条(就業規則の作成の手続)において、
 
第七条(就業規則の作成の手続)事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。
第二項 前項の規定は、事業主が有期雇用労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとする場合について準用する。この場合において、「短時間労働者」とあるのは、「有期雇用労働者」と読み替えるものとする。
 
と規定しており、短時間・有期雇用労働者に関する事項について就業規則の作成・変更を行う際には、短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めなければなりません。
この短時間・有期雇用労働者の過半数代表者に関連して以下の三点が指針に新設されています。
  • 短時間・有期雇用労働者の過半数代表者となることができる労働者の要件
<雇用管理指針>
第三 一 短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者
  • 短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者(短時間・有期雇用労働者法第七条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。以下この㈠及び㈢において同じ。)に規定する短時間労働者又は有期雇用労働者の過半数を代表すると認められるものをいい、事業所に短時間・有期雇用労働者の過半数で組織する労働組合がある場合における当該労働組合を除く。以下この一において同じ。)は、次のいずれにも該当する者とする。ただし、イに該当する者がいない事業所において同条一項の意見を聴く場合にあっては、ロに該当する者とする。
イ労働基準法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
ロ短時間・有期雇用労働者法第七条第一項の規定により意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、事業主の意向に基づき選出されたものでないこと。
 
つまり、短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件は、労働基準法施行規則第六条の二(過半数代表者)第一項、第二項と同じであることが明示されました。
 
  • 不利益取扱いの禁止
短時間・有期雇用労働者の過半数代表者に関することを理由として解雇等の不利益取扱いをしてはならないことが明示されています。
<雇用管理指針>
第三 一 短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者
  • 事業主は、労働者が短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者であること若しくは短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者になろうとしたこと又は短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
 
不利益取扱いについても、労働基準法施行規則第六条の二第三項と同じであることが記載されています。
 
  • 事務遂行のための必要な配慮
短時間・有期雇用労働者の過半数代表者がその事務作業を円滑に行うことができるよう必要な配慮(事務スペースや事務機器の提供等)をしなければならないことが明示されています。
<雇用管理指針>
第三 一 短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者
  • 事業主は、短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者が短時間・有期雇用労働者法第七条第一項の規定による意見の聴取に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない。当該配慮としては、例えば、短時間・有期雇用労働者の過半数を代表する者が短時間・有期雇用労働者の意見の集約等を行うに当たって必要となる事務スペースや事務機器の提供(イントラネットや社内電子メールを利用させることを含む。)を行うこと等が考えられる。
 
これに関しても、労働基準法施行規則第六条の二第四項の規定と同様に記載されています。
4⃣福利厚生施設の利用に関する便宜の供与
短時間・有期雇用労働法はその第十二条(福利厚生施設)において、
第十二条(福利厚生施設)事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。
そして、施行規則第五条で、「法第十二条の厚生労働省令で定める福利厚生施設は次に掲げるものとする。一給食施設、二休憩室、三更衣室」とし、福利厚生施設の利用について規定しています。今回の改正で、その他の福利厚生施設に関しても具体例を挙げ、短時間・有期雇用労働者に対して利用に関する便宜の供与の措置を講ずるように配慮しなければならないことが明記されました。
<雇用管理指針>
第三 三 福利厚生施設
事業主は、短時間・有期雇用労働者について、業務が適正かつ円滑に行われるようにするため、短時間・有期雇用労働者法第十二条の福利厚生施設のほか、事業主が設置及び運営し、通常の労働者に対して利用の機会を与える物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設、駐車場等の施設の利用に関する便宜の供与の措置を講ずるように配慮しなければならないものとする。
5⃣正社員転換推進措置について
短時間・有期雇用労働法はその第十三条(通常の労働者への転換)において、
第十三条(通常の労働者への転換)事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に周知すること。
二通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者に対して与えること。
三一定の資格を有する短時間・有期雇用労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。
と、規定しています。今回の改正では、法第十三条各号の転換推進措置実施の際には、「正社員への転換のための制度を設けるとともに複数の措置を講ずることが望ましいこと」「労働契約の更新の際の面談等の機会を利用し、または電子メール等を活用すること等により、正社員転換推進措置の対象となる短時間・有期雇用労働者の意向を確認し、その意向に配慮しなければならないこと」が記載されています。
<雇用管理指針>
第三 四 通常の労働者への転換の推進
  • 事業主は、短時間・有期雇用労働者法第十三条各号のいずれかの措置を講ずるに当たっては、通常の労働者への転換のための制度を設けるとともに複数の措置を講ずることが望ましい。
  • 事業主は、短時間・有期雇用労働者法第十三条各号のいずれかの措置を講ずるに当たっては、労働契約の更新の際の面談等の機会を利用し、又は電子メール等を活用すること等により、当該措置の対象となる短時間・有期雇用労働者の意向を確認し、その意向に配慮しなければならないものとする。             6⃣待遇差についての説明
    ・説明方法について
短時間・有期雇用労働法はその第十四条第二項(事業主が講ずる措置の内容等の説明)において、
第十四条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)
第二項 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
と規定しています。今回の改正では、改正前の「口頭により説明することを基本とし、資料を用いる場合には、資料を交付する等の方法でも差支えない」の記述を変更・追記し、「資料を活用し、口頭により説明する方法又は説明すべき内容を総て記載した資料を交付する等の方法」のいずれかの方法とし、口頭により説明する方法による場合には、説明に活用した資料等を交付することが望ましいこととしています。
また、労働者の個人情報等の漏洩の観点から資料を交付することが困難な場合であっても、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときには資料を閲覧させる等の工夫をするように努めることが記載されています。
<雇用管理指針>
第三 五 ㈣ 説明の方法
事業主は、短時間・有期雇用労働者がその内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により説明する方法又は説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を交付する等の方法により説明するものとする。また、資料を活用し、口頭により説明する場合には、事業主は、説明に活用した資料その他の関連資料を交付することが望ましい。さらに、労働者の個人情報等の漏えいを防止する等の観点から当該資料を交付することが困難な場合であっても、短時間・有期雇用労働者から事後に求めがあったときは当該資料を閲覧させる等の工夫をするように努めるものとする。
・説明の求めがない場合の周知
短時間・有期雇用労働法はその第十㈣条第二項(事業主が講ずる措置の内容等の説明)は、「その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、・・・・当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。」と規定していることから、説明の求めがあったときを前提とした規定です。今回の改正では、説明の求めがない場合には短時間・有期雇用労働者が説明を受ける機会を逸失し、紛争に発展することが考えられるため、説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新時等に、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇差の内容・理由に関する分かりやすい資料を交付することや、待遇の相違の内容・理由に関する説明を求めることができることを周知するといった対応を行うことが望ましいことが記載されています。
<雇用管理指針>
第三 五 ㈤ 説明の求めがない場合における周知等
事業主は、短時間・有期雇用労働者の自らの待遇に関する納得性の向上が当該待遇に関する紛争の防止に資することを踏まえ、短時間・有期雇用労働者から説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新の際等に、当該短時間・有期雇用労働者に対し、短時間・有期雇用労働者が待遇の相違の内容及び理由について容易に理解できる内容の資料を交付することや、待遇の相違の内容及び理由について説明を求めることができることを周知すること等が望ましい。
7⃣労使の話し合いの促進
事業主が短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置を講じるに当たっては、そのコミュニケーションの方法として、「関係労使の十分な話合いの機会を提供する等」と抽象的な表現がされていましたが、今回の改正では、短時間・有期雇用労働者との話合いの機会を設けること又はアンケートを実施すること等という具体的な方法を示し、そしてその方法は短時間・有期雇用労働者の意見を反映させるために執るものであるというその目的が追記・明示されています。
<雇用管理指針>
第三 六 労使の話合いの促進
  •  事業主は、短時間・有期雇用労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっては、短時間・有期雇用労働者との話合いの機会を設けること又はアンケートを実施すること等により、当該事業主における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間・有期雇用労働者の意見を聴く機会を設け、当該意見を反映させるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
  • 短時間・有期雇用労働者の過半数代表者に関することを理由として解雇等の不利益取扱いの禁止
改正前は指針の第三 四 ㈠に示されていた過半数代表者に関する不利益取扱いの禁止が削除されました。
これは改正後指針の第三 一 ㈡に同事項が新設されたことによるものです。
  • 雇用管理の改善等に関する情報の公開
正社員への転換制度の内容、転換実績や教育訓練に関する取組状況に関する情報を短時間・有期雇用労働者に明示するよう努め、公的機関のウェブサイト又は自ら管理するウェブサイトへの掲載その他の適切な方法により定期的に公表することが望ましいことが記載されています。
<雇用管理指針>
第三 九 雇用管理の改善等に関する情報の公表等
事業主は、通常の労働者への転換のための制度の内容及び当該制度による転換の実績並びに職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練等に関する取組状況に関する情報を短時間・有期雇用労働者に明示するよう努めるとともに、公的機関のウェブサイト又は自ら管理するウェブサイトへの掲載その他の適切な方法により定期的に公表することが望ましい。
 
2026年08月21日 11:08

令和8年10月1日~ 求職活動等におけるセクシャルハラスメント対策義務化!

○求職活動等におけるセクシャルハラスメントとは?
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律が令和8年10月1日から改正され、新たに第十三条、第十四条に求職活動等におけるセクシャルハラスメントが定義されます。
(求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十三条 事業主は、求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの*1(以下この項及び次項並びに次条において「求職者等」という。)によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下この項及び同条第一項において「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者*2による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が事業主による求職者等からの前項の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
(求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)
第十四条 国は、求職者等の求職活動等を阻害する前条第一項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「求職活動等における性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、求職活動等における性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
○求職活動等におけるセクシャルハラスメントとは
求職活動等におけるセクシャルハラスメントとは、法第十三条第一項より、求職活動等において行われる事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されることをいいます。

㈠求職者等とは 
*1:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則 第二条の三( 法 第 十 三 条 第 一 項 の 厚 生 労 働 省 令 で 定 め る 者 )
法 第 十 三 条 第 一 項 の 厚 生 労 働 省 令 で 定 め る 者 は 、 求 職 者 以 外 の 者 で あ つ て 、 次 に 掲 げ る 者 と す る 。
一 事 業 主 の 実 施 す る 労 働 者 の 採 用 に 資 す る 活 動 に 参 加 す る 者
二 教 育 実 習 、 看 護 実 習 そ の 他 の 実 習 を 受 け る 者
㈡労働者とは
*2:いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、 契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てをいう。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、防止措置を講じることが必要。
㈢求職活動等とは
法第十三条第三項に基づいて定められた「指針」(事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)において以下の様に定義されています。
「求職活動等」とは、求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例えば以下のものが含まれる。
(例)
・ 企業の採用面接への参加 ・ 企業の就職説明会への参加 ・ 企業の雇用する労働者への訪問 ・ インターンシップへの参加 ・ 教育実習、看護実習等の実習の受講
なお、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれる。また、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らない。
㈣性的な言動とは
「指針」において以下のように定義されています。
「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。 また、当該言動を行う者には、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)も想定されるため、これらの者による「性的な言動」についても必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。

○求職活動等におけるセクシャルハラスメントの典型例
「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」とは、求職活動等において行われる求職者等の意に反する性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害され、能力の発 揮に重大な悪影響が生じる等当該求職者等が求職活動等を行う上で看過できない程度 の支障が生じることであって、その状況は多様ですが、指針においては典型的な例として、次のようなものが挙げられています。
イ 少人数の説明会において、労働者が求職者等の腰、胸等に触ったため、当該求職者 等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
ロ 企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
ハ 企業が実施するインターンシップにおいて、性的な内容を含むポスターの掲示や画 面の表示等を行っているため、求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が 手につかないこと。
ニ 面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛 に感じてその求職活動の意欲が低下していること。
ホ 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該 求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
ヘ インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等 が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

○求職活動等におけるセクシャルハラスメントに関する国、事業主、労働者の責務
㈠国の責務
先出の男女雇用機会均等法第十四条第一項に求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する国の責務が定められています。
第十四条第一項 国には、
「求職活動等における性的言動問題」*3に対する事業主その他国民一般の関心と理解を促すために、広報活動、啓発活動を行うこと
が求められています。
*3:求職者等の求職活動等を阻害するセクシャルハラスメントを行ってはならないことその他求職活動等における性的言動に起因する問題
㈡事業主の責務
先出の男女雇用機会均等法第十三条第二項、第十四条第二項、第三項に求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する事業主の責務が定められています。
第十三条 第二項 事業主には、
・労働者が事業主による求職者等からのセクシャルハラスメントについての相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
第十四条 第二項
・自身が雇用する労働者の求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する関心と理解を促すこと
・労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をすること
・国の講じる求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する措置に協力すること
第十四条 第三項
・事業主自身が求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する関心と理解を深めること
・事業主自身が求職者等に対する言動に必要な注意を払うこと
が求められています。
㈢労働者の責務
先出の男女雇用機会均等法第十四条第四項に求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する労働者の責務が定められています。
第十四条 第四項 労働者には、
・求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する関心と理解を深めること
・求職者等に対する言動に必要な注意を払うこと
・事業主の講じる求職活動等におけるセクシャルハラスメントに対する措置に協力すること
が求められています。

○求職活動等におけるセクシャルハラスメント防止のために事業主が講じなければならない措置の内容
先出の男女雇用機会均等法第十三条第一項に、事業主は求職活動等におけるセクシャルハラスメントを防止するために必要な措置を講じなければならないことが規定されています。
この講ずべき措置の内容について、指針において次のとおりその詳細が示されています。
㈠事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①求職活動等におけるセクシャルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
②求職活動等におけるセクシャルハラスメントを行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること。
③求職活動等に関するルール*4をあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発すること。
*4:面談時間及び場所の指定、実施体制、やりとりに用いるSNSの種類の指定等、面談等を行う際の規則等
㈡相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備
①相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、求職者等に周知すること 求職者等は人事担当者への相談をためらうことが考えられるため、相談窓口の担当者は人事担当者以外の者を指定することもあり得る。
㈢事後の迅速かつ適切な対応
①事実関係を迅速かつ正確に確認すること 
②求職活動等におけるセクシャルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
③求職活動等におけるセクシャルハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
④改めて求職活動等におけるセクシャルハラスメントに関する方針の周知・啓発等再発防止に向けた措置を講ずること。求職活動等におけるセクシャルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の再発防止措置を講ずること。
㈣㈠から㈢までの措置と併せて講ずべき措置
①相談への対応又はセクシャルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者及び求職者等に対して周知すること。
②労働者が求職活動等におけるセクシャルハラスメントに関する事実関係の確認等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
 
○求職活動等におけるセクシャルハラスメントを防止するために事業主が行うことが望ましい取組
指針は、先述の求職活動等に対するセクシャルハラスメント防止のために事業主が講じなければならない措置の内容に加え、事業主が行うことが望ましい取組として、以下の内容を挙げています。
①求職者等が所属する機関との連携
・大学や専門学校等、求職者等が所属する機関から求職活動等におけるセクシャルハラスメントの相談に関する情報が提供された場合には、それらと連携し、適切な対応を行うことが望ましい。
②顧客等からのセクシャルハラスメントへの対応
事業主は、求職者等から、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(カスタマーハラスメントにおける顧客等)による求職者等に対するセクシュアルハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、求職者等に対するセクシャルハラスメント防止のための雇用管理上の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。
 
○求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為等に関し行うことが望ましい取組
指針は、前出の事業主及び労働者の責務の趣旨に関連し、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為、求職活動等における妊娠、出産等に関するハラスメントに類する行為及び求職活動等における育児休業等に関するハラスメントに類する行為(以下「求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為等」という。)について、事業主は、当該事業主が雇用する労働者の求職者等に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)自らと労働者も、求職者等に対する言動について必要な注意を払うよう努めることが望ましいと、他のハラスメントに対する防止措置を行うことが望ましいとしています。 こうした責務の趣旨も踏まえ、事業主は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為等についても、同様の方針を併せて示すことが望ましく、求職者等から求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為等に関すると考えられる相談があった場合には、求職者等に対するセクシャルハラスメント防止のための雇用管理上の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとしています。
また、求職者等から、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者による求職活動等におけるカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、求職者等に対するセクシャルハラスメント防止のための雇用管理上の措置も参考にしつつ、 必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとしています。
2026年07月31日 10:03

令和8年10月~!カスタマーハラスメント対策が義務化されます。

○カスタマーハラスメントとは?
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律が令和8年10月1日から改正され、新たに第三十三条、第三十四条にカスタマーハラスメントが定義されます。
(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第三十三条 事業主は、職場*1において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(次条第五項において「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者*2が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この項及び次条第一項において「顧客等言動」という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
 3 事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
4 厚生労働大臣は、前三項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
5 第三十一条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。
 
(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務)
第三十四条 国は、労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題(以下この条において「顧客等言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
4 労働者は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
5 顧客等は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならない。
職場において行われる②③の要素全てを満たすものをカスタマーハラスメントといいます。
*1:事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。(例)・取引先の事務所・取引先と打合せをするための飲食店・顧客等の自宅等であっても、労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する
*2:いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、 契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てをいう。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、防止措置を講じることが必要。
 
㈠「顧客等」とは顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある潜在的な顧客も含む。)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む。)その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者を指します。
(例)第三十三条第四項の厚生労働大臣が定める指針に例示
・ 事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者
・ 事業主の行う事業に関する内容等に関し問い合わせをする者
・ 取引先の担当者
・ 企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者
・ 施設・サービスの利用者及びその家族
・ 施設の近隣住民
㈡「その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えた」言動とは
社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものとされています。その判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)との関係性等)を総合的に考慮することが適当であり、「言動の内容」、「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でもこれに該当し得るとされています。なお、社会通念上許容される範囲を超えるかどうかの判断に当たっては、事業主又は労働者の側の不適切な対応がこの言動の原因や背景となっている場合もあることから、このことも考慮する必要があります。
社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型例として、指針は以下のものを挙げています。
【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
① そもそも要求に理由がない又は商品
・サービス等と全く関係のない要求・ 性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること。
② 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
・ 契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること。
③ 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
・ 契約金額の著しい減額の要求をすること。
④ 不当な損害賠償要求
・ 商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること。

【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
①身体的な攻撃(暴行、傷害等)
・ 殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと。 ・ 物を投げつけること。 ・ わざとぶつかること。 ・ つばを吐きかけること。
② 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
・ 店舗の物を壊すことをほのめかす発言やSNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと。 ・ SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報の投稿等をすること。 ・ 労働者の人格を否定するような言動を行うこと。(相手の性的指向、ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うことを含む)・土下座を強要すること・盗撮や無断での撮影をすること。・労働者の性的指向、ジェンダーアイデンティティ等の機微な
個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の者に暴露すること又は当該労働者が開示することを強要する若しくは禁止すること。
③ 威圧的な言動
・ 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること。 ・ 反社会的な言動を行うこと。
④継続的、執拗な言動
・ 同様の質問を執拗に繰り返すこと。・当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。・同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること。
⑤拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
・ 長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること。

㈢「労働者の就業環境が害される」とは
顧客等の言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。 この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況でこの言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。 この判断基準について、言動に対する感じ方は人それぞれですので、その判断を難しくするものだと思います。とはいえ、常識的かつ平衡感覚を以て考慮すればよいものと考えます。なお、この言動の頻度や継続性は考慮しますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動であっても、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じ、就業環境を害することはあり得るとされています。

○カスタマーハラスメントに関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務

㈠国の責務
先出の労働施策総合推進法第三十四条第一項にカスタマーハラスメントに対する国の責務が定められています。
第三十四条第一項 国には、

「カスタマーハラスメント問題」*3に対する事業主その他国民一般の関心と理解を促すために、各事業分野の特性を踏まえて広報活動、啓発活動を行うこと
が求められています。
*3:労働者の就業環境を害するカスタマーハラスメントを行つてはならないことその他カスタマーハラスメントに起因する問題

㈡事業主の責務
先出の労働施策総合推進法第三十三条第二項、第三項、第三十四条第二項、第三項にカスタマーハラスメントに対する事業主の責務が定められています。
第三十三条 第二項 事業主には、
・労働者がカスタマーハラスメントについての相談を行ったこと又は事業主によるその相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
第三十三条 第三項 
・他の事業主から他の事業主が講じるカスタマーハラスメントに関する措置の実施について、必要な協力を求められた場合には、これに応じること
第三十四条 第二項
・自身が雇用する労働者のカスタマーハラスメントに対する関心と理解を促すこと
・労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をすること
・国の講じるカスタマーハラスメントに対する措置に協力すること
第三十四条 第三項
・事業主自身のカスタマーハラスメントに対する関心と理解を深めること
・事業主自身の他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
が求められています。

㈢労働者の責務
先出の労働施策総合推進法第三十四条第四項にカスタマーハラスメントに対する労働者の責務が定められています。
第三十四条 第四項 労働者には、
・カスタマーハラスメントに対する関心と理解を深めること
・他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
・事業主の講じるカスタマーハラスメントに対する措置に協力すること
が求められています。

㈣顧客等の責務
先出の労働施策総合推進法第三十四条第五項にカスタマーハラスメントに対する顧客等の責務が定められています。
第三十四条 第五項 顧客等には、
・カスタマーハラスメントに対する関心と理解を深めること
・労働者の就業環境を害することのないように労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
が求められています。

○カスタマーハラスメント防止のために事業主が講じなければならない措置の内容

先出の労働施策総合推進法第三十三条第一項に、事業主はカスタマーハラスメントを防止するために必要な措置を講じなければならないことが規定されています。
この講ずべき措置の内容について、先出の労働施策総合推進法第三十三条第四項に規定された指針において次のとおりその詳細が示されています。

㈠事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
②職場におけるカスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容*4を、管理監督者を含む労働者に周知するこ と。
*4:対処内容として以下のものが例示されています。
・管理監督者等に報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐこと
・可能な限り労働者を一人で対応させないこと、当該労働者に代わって管理監督者等が対応すること
・顧客等とのやり取りを録音・録画すること(録音・録画の際は個人情報保護に留意が必要)
・労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一 定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること
・暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること
・現場対応が困難な場合においては、本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐこと
・法的な手続が必要な場合には、法務部門等と連携し、弁護士へ相談すること 等

㈡相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備
①相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること 他のハラスメント窓口と一体的設置も可
②相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

㈢事後の迅速かつ適切な対応
①事実関係を迅速かつ正確に確認すること 行為者が、他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主である場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認への協力を求めることも含まれる。
②職場におけるカスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
③改めて職場におけるカスタマーハラスメントに関する方針の周知・啓発、必要時には、職場におけるカスタマーハラスメントの発生の原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などの改善等、再発防止に向けた措置を講ずること

㈣対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置
①労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針*5をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備すること
*5:指針では、特に悪質と考えられるものへの対処として以下のようなものを例示しています。
・暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること
・行為者に対して警告文を発出すること
・法令の制限内において行為者に対して商品の販売、サービスの提供等をしないこと
・行為者に対して店舗及び施設等への出入りを禁止すること
・民事保全法(平成元年法律第91号)に基づく仮処分命令を申し立てること
ただし、対処の内容を検討するに当たっては、各業法等による定めがある場合等、業種・業態等により必要な対応が異なる場合があることに留意し、状況に応じた方針を定めることが効果的とされています。

㈤㈠から㈣までの措置と併せて講ずべき措置
①相談への対応又はカスタマーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること
②カスタマーハラスメントの相談等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
 
なお、職場におけるカスタマーハラスメント対策を講ずる際は、消費者の権利や、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律において、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務等が定められていることから、顧客等の権利の侵害や事業者としての義務の懈怠になることのないよう、事案に応じて適切な対応をする必要があります。

○他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力
事業主の責務で記載しましたが、指針においては、法第三十三条第三項の規定により、事業主は、自身が雇用する労働者又は事業主自身による他の事業主の雇用する労働者に対する職場におけるカスタマーハラスメントに関し、他の事業主から、事実関係の確認等の雇用管理上の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、次の措置を講ずるよう努めなければならないとされています。
① 事業主は、他の事業主からの協力の求めに応ずるように努めなければならない。 また、同項の規定の趣旨に鑑みれば、事業主が、他の事業主から雇用管理上の措置 への協力を求められたことを理由として、当該事業主に対し、当該事業主との契約を解除する等の不利益な取扱いを行うことは望ましくないとされています。
 ②事業主は、他の事業主からの協力の求めに応じて、労働者へ事実関係の確認等を行うに当たっては、これに協力した労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いを行わな い旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。 加えて、事実関係の確認により、職場におけるカスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、事業主は、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずることが望ましい。

○カスタマーハラスメントを防止するために事業主が行うことが望ましい取組
指針は、先述のカスタマーハラスメント防止のために事業主が講じなければならない措置の内容に加え、カスタマーハラスメントを防止するために事業主が行うことが望ましい取組として、以下の内容を挙げています。
①カスタマーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組
・労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るために研修等を行うこと
・労働者が顧客等への理解を深めるために必要な取組を行うこと
この取組を行うに当たっては、労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図ることは、職場におけるカスタマーハラスメントの被害者になることを防止する上で重要であることや、顧客等からの社会通念上許容される範囲で行われる正当な申入れについては、職場におけるカスタマーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした正当な申入れを踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意することが必要とされています。
②雇用管理上の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること
③カスタマーハラスメントは、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めること
④労働者が取引の相手方に対して職場におけるカスタマーハラスメントに係る言動を 行う場合もあることから、他の事業主が雇用する労働者に対する言動について、職場におけるカスタマーハラスメントを行ってはならない旨の方針を示すこと

○自らの雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動に関して行うことが望ましい取組
①事業主は、事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針の明確化等を行う際に、職場におけるその事業主が雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者及び個人事業主等の労働者以外の者*6)に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示すこと
②事業主が雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者及び個人事業主等の労働者以外の者)からカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、雇用管理上の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めること
*6:(例)小売店において、商品のメーカーに雇用されている労働者(小売店に雇用されている労働者ではない)が商品販売のために勤務している場合等
2026年07月28日 10:17

令和8年8月、9年8月からの高額療養費制度の見直し

○高額療養費とは?
高額療養費制度は高額な医療費に伴う経済的負担を軽減する仕組みで、一月に医療機関に支払った額が定められた上限額を超えた場合に、上限を超えて支払った額を払い戻す健康保険法第百十五条に規定されている制度です。
第百十五条(高額療養費) 療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費として支給される額に相当する額を控除した額(次条第一項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、その療養の給付又はその保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた者に対し、高額療養費を支給する。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令*1で定める。
今回の改正は、この第二項の「家計」の後に「、とりわけ長期にわたって継続的に療養を受ける者の家計」が加えられ、改正法として令和8年8月1日に施行されることになっています。
この改正は、近年の高齢化、医療の高度化、高額医薬品の開発等医療費が増大する要因が多々ある中において、医療費の伸びに対応した制度の改革は避けることのできない課題となっているものの、高額な医療を必要とする状態になった場合には、高額療養費は重要なセーフティネット機能を果たすものであることを考慮すると、将来に亘って維持する必要があり、また低所得者や長期の療養を要する制度利用者の経済的負担に配慮したものでなければならないという考えを背景に行われるものです。特に改革の検討に当たっては、患者団体など制度の当事者やその意見を伝える立場の委員の参画があったことから長期療養者への影響を適切に考慮し、十分に配慮することが重視され、「、とりわけ長期にわたって継続的に療養を受ける者の家計」の文言が追加されたものです。
*1:健康保険法第百十五条第二項の政令は、健康保険法施行令を指します。施行令中高額療養費については、第四十一条から第四十三条に規定されていますが、かなりの長文であるため、掲載は割愛します。この長文を読解するのは困難を伴うことから、厚生労働省は実務者向けに整理した一覧表を作成していますので、以下に掲載します。
※高額療養費自己負担限度額早見表(令和8年8月見直し前)を参照(厚生労働省「高額療養費制度に関する参考資料」)
 
○令和8年8月から変更を予定している高額療養費制度の内容
①低所得者の負担に配慮しつつ、一人当たりの医療費の伸びに応じて月額負担上限額を見直しています。
月単位の上限額の計算式の金額を変更していますが、計算結果が大きく増額することがないように配慮した見直しとなっているということです。
②長期療養者への配慮の観点から、「多数回該当」*2の金額を維持するとともに、長期にわたり治療を継続している人が不安に感じる「将来の医療費負担」に見通しを立てやすくなるよう、新たに年単位の上限額(年間上限)を設けています。
多数回該当の金額が据え置きとなっていることから、長期療養者の影響への配慮を窺うことができます。また、年単位の上限額が新設されていて、年間の医療費負担を計画的に見通すことができる仕組みが導入されています。
*2:過去12か月以内に3回以上、上限に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がる仕組み
※高額療養費自己負担限度額早見表(令和8年8月~令和9年7月)を参照(厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」)

○令和9年8月から変更を予定している高額療養費制度の内容
①応能負担という観点に基づき、所得区分が細分化されます。
従来の所得区分がさらに3段階細分化され、旧同区分内の上位所得者には相応の負担増となっています。
令和8年の①とともに制度の持続可能性を意図した見直しといえるでしょう。
②低所得者への配慮の観点から、「年収200万円未満の課税世帯」の多数回該当の金額が引き下げられます。
年収区分がさらに下方へ3段階細分化され、年収200万円未満の多数回該当の金額が44,400円⇒34,500円で△9,900円となり、低所得者の負担が軽減されます。それとともに年収200万円以上370万円未満の人には相応の負担増となっています。
※高額療養費自己負担限度額早見表(令和9年8月~)を参照(厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」)
 
○まとめ
高額療養費制度は、高齢化、医療の高度化、高額薬剤の開発等によって、医療費の増加が見込まれる昨今において、その持続可能性を図るという観点から負担増の見直しを行わなければならない情勢と言えます。しかし一方で、高額療養費制度は社会のセーフティネットを支える重要な柱であることも否定することはできません。
上記のような観点から、高額療養費制度を将来的に維持するという視点で国は様々な見直しを検討し、実施するようです。ただし、その検討の根底にあるのは、低所得者や長期療養者への配慮です。制度の持続可能性だけを眼中にして、弱者への配慮を欠いては社会保障制度が成り立たないことから、応能負担という観点で負担増を図りながらも、弱者への負担増は極力抑制するという構造を執ることで苦心しながらも見直しを決定したように思います。今回は、その内容について概要を記載しましたが、改正が段階的に行われるため、最後に全体像を捉えやすいように、段階的比較表を掲示します。ご参照ください。
※高額療養費制度の段階的改正比較表(厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」)
 
2026年07月10日 16:05

労働契約法第二章 労働契約の成立及び変更解説

労働契約法(第二章 労働契約の成立及び変更)
労働契約法第二章労働契約の成立及び変更は、第六条(労働契約の成立)~第十三条(法令及び労働協約と就業規則との関係)で構成されています。
労働契約が労働者と使用者の合意により成立すること、労使の合意により労働契約の内容である労働条件を変更できることを定めています。そして、合意以外の形式として、例外的に就業規則の変更によって労働契約の内容が規律され、または変更されるという規定が定められています。
また、改正前に労基法に定められていた就業規則の最低基準効を引き継ぎ、就業規則と法令及び労働協約との関係についても規定されています。
ここでは、第六条(労働契約法の成立及び変更)と第七条(労働契約の内容と就業規則)について記載します。
 
○労働契約の成立
労働契約が、①労働者が使用者に使用されて労働(指揮命令に従った労務提供)すること、②使用者がこれに対して賃金を支払う(労務の対償としての賃金支払)ことの二つの要件について労働者と使用者が合意した場合に成立することを第六条は定めています。
民法は雇用について、「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」と規定しています。この民法の規定は労働契約に該当することから労契法第六条が規定されています。
 
第六条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
労働契約が成立するのは、①②の合意があった時です。民法によると契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」とされています。このことは労働契約においても当てはまるものですので、労働契約法は①②について当事者が合意することを労働契約成立の要件としているのです。
つまり、労働者が①②を示して契約の申込みをし、これに対して使用者が承諾をする、または逆に使用者が①②を示して契約の申込みをし、これに対して労働者が承諾をすることによって労働契約は成立するものです。
「合意することによって成立する」について、労働契約は、 労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立するものである。したがって、労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものである。 また、法第六条の労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかった場合であっても、労働契約そのものは成立し得るものである。と通達されています。
すなわち、労働契約法が定める労働契約の成立要件としては、抽象的な労務提供と賃金支払で足り、例えば、使用者が労働の内容や賃金額について具体的に明示せず、後日の決定に委ねるとしても、①②について合意すれば労働契約自体は成立するということです。ただし、労働者がどのような種類・内容の仕事なのか、報酬はどの程度のものが支払われるのか不明確な状態で合意の意思表示をすることは、まず考えられないため、そのような状況で契約が成立することは、あったとしても極稀であると思われます。
 
○労働契約の内容と就業規則
労働契約の成立については、労使の合意によって成立するものですが、その合意は労働条件のすべてについてされたものではなく、それらの一部についての合意にすぎないものです。日本における労働契約では、合意した条件以外の詳細な労働条件は定められず、就業規則によって統一的に条件設定が行われてきました。つまり、就業規則の記載事項が、実際上、労働契約の内容として取り入れられるという運用がされてきました。
しかし、就業規則で定める労働条件と労働契約の内容である労働条件との法的関係については、従来は法令上明らかにされていませんでした。つまり、使用者が一方的に定める就業規則が、何故に、またいかなる条件の下に、労働契約の内容としての意義を持つようになるのかについて、法令に定められていなかったのです。
そこで労働契約法第七条において、上記従来の慣習や学説、判例等の蓄積を整理して、労働契約の成立場面における就業規則と労働契約との法的関係について規定されたものです。
第七条(労働契約の内容と就業規則)
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない。
第七条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となるための要件
第七条は、労働契約において労働条件を詳細に定めずに労働者が就職した場合において、①「合理的な労働条件が定められている就業規則」であること及び②「就業規則を労働者に周知させていた」ことという2要件を満たしている場合には、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容を補充し、「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による」という法的効果が生じることを規定したものです。
これは、労働契約の成立についての合意はあるものの、労働条件は詳細に定めていない場合であっても、就業規則で定める労働条件によって労働契約の内容を補充することにより、労働契約の内容を確定するものであるということです。
・労働者及び使用者が労働契約を締結する場合との記述について
法第七条は労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されないものです。また、就業規則が存在する事業場で使用者が就業規則の変更を行った場合については、法第十条(就業規則による労働契約の内容の変更)の問題となるものです。
・合理的な労働条件について
「合理的な労働条件」は、個々の労働条件について判断されるものであり、就業規則において合理的な労働条件を定めた部分については同条の法的効果が生じ、合理的でない労働条件を定めた部分については同条本文の法的効果が生じないこととなるものです。
「合理的な労働条件」とは、就業規則による労働条件の統一的・画一的という要請に反しないものであれば合理性ありといえ、その目的や内容が、従業員の大多数の利益に反するものでない程度に正当であれば、合理性ありと判断できる。また、合理性は「企業の人事管理上の必要性があり、労働者の権利・利益を不当に制限していなければ肯定される。との見解が示されています。
就業規則に定められている事項であっても、例えば、就業規則の制定趣旨や根本精神を宣言した規定、労使協議の手続に関する規定等労働条件でないものについては、法第七条本文によっても労働契約の内容とはなりません。
・法第七条の就業規則とは
労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様ですが、法第七条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
・周知とは
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいいます。このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、法第七条の「周知させていた」に該当するものです。
なお、労働基準法第百六条の「周知」は、労働基準法施行規則第五十二条の二により、①から③までのいずれかの方法によるべきこととされていますが、法第七条の「周知」は、これらの3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されるものです。
・労働者に周知させていたとは
その事業場の労働者及び新たに労働契約を締結する労働者に対してあらかじめ周知させていなければならないものであり、新たに労働契約を締結する労働者については、労働契約の締結と同時である場合も含まれるものです。
・労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分
法第七条は、就業規則により労働契約の内容を補充することを規定したものであることから、同条本文の規定による法的効果が生じるのは、労働契約において詳細に定められていない部分についてであり、「就業規則の内容と異なる労働条件」を合意していた部分については、同条ただし書により、法第十二条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものです。
 
○労働契約の内容の変更
労働契約の締結の際には、労使が合意することで成立することが第六条で示されています(合意の原則)が、第八条ではこの合意の原則が、さらに労働契約の内容である労働条件の変更の際にも適用されることが定められています。
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働契約においては、使用者が事実上、優越的地位にあることから労働条件を一方的に引き下げようとする動機が働くことがあり、このような労働契約の変更の場面においては、労働者の意思が蔑ろにされやすいものです。
このことに対して、第八条は労働者と使用者が「合意」するという要件を満たした場合に労働契約の内容である労働条件を変更できるという法的効果が生じることを規定したものです。
つまり、成立した契約について、一方の当事者がその一方の意思によって変更することは認められないということを規定しています。なお、条文では「その合意により、・・・変更することができる。」との記載です。これは、「労働条件を変更することは可能ですよ。ただしその場合には合意が必要ですよ。」と労働条件が労使の合意によって変更されるものであることを確認したものであって、合意の必要性を強調しています。この合意については、口頭でもできるもので、書面を交付することまでは求められていません。 
○就業規則による労働契約の内容の変更
労働契約法第八条によって、労働契約の内容である労働条件は合意によらなければ変更することができないのが原則です。このことは、その労働条件が就業規則で定められている場合も同様で、第九条は労働者と合意することなく、就業規則を変更するという手段によって、労働契約の内容である労働条件を変更することはできないことを規定しています。あくまでも合意が必要であり、就業規則の変更という単独手段による一方的変更はできないのです。
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
ただし、九条条文には「不利益に」の文言が付されているのが気になるところです。これについては、不利益な変更は合意なしに就業規則の変更によって行うことはできず、また有利な変更であっても合意なしに就業規則の変更によって行うことはできないのは同じです。前者は第九条、後者は第八条の規制を受けてできないということになります。しかし、有利な変更については、労働条件が良い方向へ変わるということですので、労働者からの異論は出ず、争う余地がありません。つまり黙示の合意という位置づけとなり、第八条の合意の原則によって合意のない就業規則の変更による変更はできないのが原則ですが、事実上は可能ということになるのです。
更に第九条は、そのただし書において、合意によることなく労働条件の不利益な変更を可能にするという「例外」があることを第十条に委ねる構造になっています。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
この第八条、第九条、第十条はややこしく、難解であるため整理しますと以下のようになります。
第八条:契約は合意で変更が原則⇒第九条:不利益変更の禁止+就業規則による一方的変更の制限⇒第十条:不利益変更の場合+変更手続きの合理性=就業規則変更による一方的変更が可能(例外)
  1. 原則:合意で変更(第8条) 2.合意なし → 就業規則だけでは不可(第9条) 3.ただし例外的に合意のない就業規則変更による変更が可能(第10条)
つまり、自由に変えられるのは「合意」がある場合(不利益・有利共)で、合意のない一方的変更はNG(有利は事実上可能)ですが、合理的手続きが行われることで例外として一方的変更がOK(不利益)となります。
第九条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・合意のない就業規則変更による労働条件の不利益変更禁止とその例外
法第八条の労働契約の変更についての「合意の原則」に従い、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできないという原則を確認的に規定したものです。
法第九条ただし書は、法第十条の場合は、法第九条本文に規定する原則の例外であることを規定したものです。
・法第九条の就業規則とは
労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様ですが、法第九条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
・法第九条の「労働者の不利益」については、個々の労働者の不利益をいうものです。
なお、第十条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・法第十条の法的効果発生の要件
「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たこと及び「就業規則の変更」が「合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定したものです。
・労働条件変更の方向
就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となる場合に適用されるものです。なお、就業規則に定められている事項であっても、労働条件でないものについては、法第十条は適用されません。
・就業規則変更の範囲
「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれます。
・「就業規則」及び「周知」とは
「就業規則」とは、労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様であるが、法第十条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
法第十条の「周知」とは、例えば、
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいうものです。このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、法第十条の「周知させていた」に該当するものです。
なお、労働基準法第百六条の「周知」は、労働基準法施行規則第五十二条の二により、①から③までのいずれかの方法によるべきこととされているが、法第十条の「周知」は、これらの3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されます。
・法第十条本文の合理性判断の考慮要素
  • 法第十条本文の「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」は、就業規則の変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっての考慮要素として例示したものであり、個別具体的な事案に応じて、これらの考慮要素に該当する事実を含め就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮され、合理性判断が行われることとなるものです。
  • 法第十条本文の「労働者の受ける不利益の程度」については、実際に紛争となる事例は、就業規則の変更により個々の労働者に不利益が生じたことに起因するものであり、個々の労働者の不利益の程度をいうものです。
また、法第十条本文の「変更後の就業規則の内容の相当性」については、就業規則の変更の内容全体の相当性をいうものであり、変更後の就業規則の内容面に係る制度変更一般の状況が広く含まれるものです。
  • 法第十条本文の「労働条件の変更の必要性」は、使用者にとっての就業規則による労働条件の変更の必要性をいうものです。
  • 法第十条本文の「労働組合等との交渉の状況」は、労働組合等事業場の労働者の意思を代表するものとの交渉の経緯、結果等をいうものです。
「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体等労働者の意思を代表するものが広く含まれます。
  • 法第十条本文の「その他の就業規則の変更に係る事情」は、「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」を含め就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮されることをいうものです。
法第十条本文の合理性判断の考慮要素と判例法理との関係については、次のとおり(省略)同条本文は、判例法理に沿ったものです。
第四銀行事件最高裁判決においては、(省略)
したがって、法第十条の規定は判例法理に沿った内容であり、判例法理に変更を加えるものではありません。
大曲市農業協同組合事件最高裁判決においては、(省略)法第十条の規定は、この判例法理についても変更を加えるものではありません。
みちのく銀行事件最高裁判決においては、(省略)法第十条の規定は、この判例法理についても変更を加えるものではありません。
・就業規則変更の合理性の主張立証責任
就業規則の変更が法第十条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、従来どおり、使用者側が負うものです。
・法第十条の法的効果発生の時期
「当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」という法的効果が生じるのは、同条本文の要件を満たした時点であり、通常は、就業規則の変更が合理的なものであることを前提に、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させたことが客観的に認められる時点です。
・法第十条ただし書について
「就業規則の変更によっては変更されない労働条件」として合意していた部分については、第十条ただし書により、法第十二条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものです。
・法第七条ただし書について
法第7条ただし書の「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」については、将来的な労働条件について
  • 就業規則の変更により変更することを許容するもの
  • 就業規則の変更ではなく個別の合意により変更することとするもの
のいずれもがあり得ますが、①の場合には法第十条本文が適用され、②の場合には同条ただし書が適用されるものです。
 
○就業規則の変更に係る手続
就業規則による労働条件の変更については、第十条のとおり、「変更後の就業規則を労働者に周知させ」ることが手続きとしての要件とされていました。
第十一条においては、その他に労働基準法第八十九条・第九十条でも定められている内容を遵守しなければならないことを規定しています。
第十一条 (就業規則の変更に係る手続)
就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。
<労働基準法>
第八十九条(作成及び届出の義務) 
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(各号省略)
第九十条 (作成の手続)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
つまり、労働契約法第十条は労働者への周知と就業規則の合理性を要件として、就業規則の変更により労働契約の内容である労働条件を変更することができる場合について規定していますが、労働契約法第十一条は、労働基準法においても就業規則の変更の際に必要となる手続きが規定されていることからその手続きをとることが重要であることを明確にしたものです。
その手続きは①常時10人以上の労働者を使用する使用者は、変更後の就業規則を所轄労働基準監督署長に届出なければならないこと、②就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず、届出の際に、その意見を記した書面を添付しなければならないことです。
ここで特徴的なのは、就業規則の変更により労働条件を変更する場合の要件として「周知」は第十条において明確に定められているのに対して、「意見聴取・届出」は第十一条において就業規則の変更に係る手続きとしてその存在を確認している程度であることです。
それでは、労働契約法においては、「意見聴取・届出」を重要視していないのかとも思えますが、そうではないようです。
その証拠に「労働基準法第八十九条及び第九十条に規定する就業規則に関する手続は、法第十条本文の法的効果を生じさせるための要件ではないものの、就業規則の内容の合理性に資するものである。
このため、法第十一条において、就業規則の変更の手続は、労働基準法第八十九条及び第九十条の定めるところによることを規定し、それらの手続が重要であることを明らかにしたものであること。」
「労働基準法第八十九条及び第九十条の手続が履行されていることは、法第十条本文の法的効果を生じさせるための要件ではないものの、同条本文の合理性判断に際しては、就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮されることから、使用者による労働基準法第八十九条及び第九十条の遵守の状況は、合理性判断に際して考慮され得るものであること。」
と、「意見聴取・届出」は就業規則の変更により労働条件を変更する場合の要件として第十条で「周知」と並んで規定されている「就業規則の内容の合理性」判断に考慮されるべき重要な手続きであることが通達されています。
 
○就業規則違反の労働契約
労働基準法では労働契約法制定まではその第九十三条(効力)において、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されていましたが、労働契約法制定に伴って、第九十三条(労働契約との関係)は「労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第十二条の定めるところによる。」と改正されました。
そして、労働契約法はその第十二条において、改正前の労働基準法第九十三条と同一の条文で規定されました。
第十二条 (就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
このことは、労基法にも労働契約法にも同じ内容の規定を定めているということですが、労基法は労契法に移管しただけでは十分とせず、労働条件の最低基準を定めることでその向上を図ろうする労基法の趣旨を重視して労基法にも同規定を残したものです。
 
○法令及び労働協約と就業規則との関係
労働基準法第九十二条(就業規則と法令及び労働協約との関係)は「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と、就業規則と法令・労働協約の関係について規定しています。これに関連して労働契約法は、その第十三条において同趣旨の規定を設けています。
第十三条(法令及び労働協約と就業規則との関係)
就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
就業規則が法令に反してはならないこと及び労働組合と使用者との間の合意により締結された労働協約は使用者が作成する就業規則よりも優位に立つことは、法理上当然であり、就業規則は法令又は労働協約に反してはならないものです。
一方労契法では、第七条、第十条及び第十二条において、それぞれの定める一定の場面に就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることを規定しています。しかし、就業規則が法令又は労働協約に反している場合においても就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることは適当ではないことから、第十三条において、法令又は労働協約に反する就業規則の効力について規定したものです。
第十三条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・法第十三条は、就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合には、その労働条件は労働契約の内容とはならないことを規定したものです。
なお、法第十三条は、労働基準法第九十二条第一項と同趣旨の規定であり、就業規則と法令又は労働協約との関係を変更するものではありません。
・法第十三条の「就業規則」とは、労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様であるが、法第十三条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれるものです。
・法第十三条の「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいうものです。なお、罰則を伴う法令であるか否かは問わないもので、労働基準法以外の法令も含むものです。
・法第十三条の「労働協約」とは、労働組合法(昭和24年法律第174号)第十四条にいう「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する」合意で、「書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印したもの」をいうものです。
また、法第十三条の「労働協約に反する場合」とは、就業規則の内容が労働協約において定められた労働条件その他労働者の待遇に関する基準(規範的部分)に反する場合をいうものです。
・法第十三条の「労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については」とは、事業場の一部の労働者のみが労働組合に加入しており、労働協約の適用が事業場の一部の労働者に限られている場合には、労働協約の適用を受ける労働者(労働組合法第十七条及び第十八条により労働協約が拡張適用される労働者を含む。)に関してのみ、法第十三条が適用されることをいうものです。
2026年06月30日 12:21

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ハラスメントとは?
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逆に言えば、ハラスメントに関心を持ち理解すること、気分転換を図ることでハラスメントの防止対策となります。
 
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2026年06月18日 10:48

障害者雇用 雇用数を充たすだけでは十分ではありません!

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)とは?
障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図り、その能力を発揮できる社会を実現することを目的として、国・自治体・企業(事業主)に対して障害者雇用に関する各種義務を課した法律です。
(事業主の責務)
第五条 全て事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第六条 国及び地方公共団体は、自ら率先して障害者を雇用するとともに、障害者の雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるほか、事業主、障害者その他の関係者に対する援助の措置及び障害者の特性に配慮した職業リハビリテーションの措置を講ずる等障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要な施策を、障害者の福祉に関する施策との有機的な連携を図りつつ総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。
この法律制定の根底にあるのは、障害のある人も経済社会を構成する労働者の一員として、当然に職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものであり、障害者本人も職業に従事する者としての自覚を持ち、その能力開発と向上、職業人として自立に向けて努力するものとするという考え方です。
(目的)
第一条 この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
(基本的理念)
第三条 障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする。
第四条 障害者である労働者は、職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない。
上記内容を踏まえると、障害者雇用促進法は単に「一定人数の障害者を雇えばよい」というものではなく、採用から職場定着までの総合的な雇用管理を求めているものです。
つまり企業においては、人事・労務管理上、重要なコンプライアンス事項であるといえます。以下に企業のコンプライアンス上必要な措置について記載します。
 
①法定雇用率の達成義務
一定規模以上の事業主(常時雇用労働者数が40人以上、令和8年7月~37.5人)には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。(常時雇用労働者数×法定雇用率=雇用すべき障害者数小数点以下切捨)
令和8年6月までの民間企業の法定雇用率は2.5%、令和8年7月からは2.7%に引上げられます。
障害者雇用促進法の障害者とは、身体障害・知的障害・精神障害その他の心身の障害により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な人のことです。なお、短時間労働者の扱いや重度障害者のダブルカウント等、障害者雇用率制度における人数の算定には細かなルール*1がありますので、注意が必要です。
*1:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 資料編 障害者雇用率制度参照
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003mbma.html
②報告義務
障害者を雇用する一定の企業は、障害者雇用状況報告書を提出しなければなりません。障害者雇用状況報告書は、毎年6月1日現在で雇用する障害者数等対象障害者である労働者の雇用に関する状況を報告するものです。
障害者雇用促進法第四十三条第七項に基づいて、企業は厚生労働大臣に提出することが義務付けられています。
(一般事業主の雇用義務等)
第四十三条第七項 事業主(その雇用する労働者の数が常時厚生労働省令で定める数以上である事業主に限る。)は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、対象障害者である労働者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。
報告の義務がある企業は、常時雇用労働者数が40人以上(2026年7月からは法定雇用率引上げにより37.5人に拡大)の企業です。これまで障害者の雇用義務がなかった企業も、2026年7月以降は義務の対象となり、雇用状況報告が必要となる可能性があるため注意が必要です。雇用状況報告義務を怠った場合には、罰則(30万円以下の罰金)が規定されています。
雇用状況報告の手続きについては、施行規則第八条に「毎年6月1日現在の対象障害者の雇用に関する状況を7月15日までに所定の様式により管轄公共職業安定所に報告」することと規定されています。
(対象障害者の雇用に関する状況の報告)
施行規則第八条 法第四十三条第七項に規定する事業主は、毎年、六月一日現在における対象障害者(法第三十七条第二項に規定する対象障害者をいう。以下同じ。)の雇用に関する状況を、翌月十五日までに、厚生労働大臣の定める様式により、その主たる事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規則(平成十三年厚生労働省令第一号)第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公共職業安定所とする。以下「管轄公共職業安定所」という。)の長に報告しなければならない。
この報告書によって、障害者の雇用実態や法定雇用率の達成状況の把握が行われることになります。
③障害者雇用納付金制度
障害者雇用人数が法定雇用率を下回る事業主は、不足人数に応じて納付金を徴収されます。一方で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主には、超過人数に応じて調整金が支給される制度が設けられています。※常用雇用労働者100人超の事業主に限ります。(法附則第四条)
この制度は、単に「罰金」としてではなく、障害者の雇用に伴う経済的負担の調整と事業主間の社会連帯責務として、障害者雇用の促進・継続を図る役割を果たすものとされています。
なお、常時雇用労働者100人以下の事業主は、上記の通り、納付金・調整金は制度対象外ですが、調整金の代わりに報奨金が支給される制度が定められています。
 
④障害者差別の禁止
事業主は募集・採用について障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならずまた賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障害者であることを理由とする不当な差別的取扱いをしてはならないとされています。なお、その他の待遇には、配置、昇進、降格、解雇等も含みます。(参考資料:障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針)
例えば、下記のような扱いは問題となる可能性がありますので、要注意です。
・障害のみを理由として応募自体を拒否する・能力、適性を検討せず一律に不採用とする・障害者だけ昇進対象から除外する・合理的理由なく配置転換や職務制限を行う等が考えられますが、実務上は、「安全配慮」「業務遂行能力」「合理的配慮との関係」を総合的に検討する必要があります。
(障害者に対する差別の禁止)
第三十四条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。
第三十五条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
⑤合理的配慮の提供
事業主は障害者が障害でない者との均等な機会・待遇の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集・採用に当たり障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を、障害者が障害でない者との均等な待遇の確保又は障害者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、障害者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければなりません。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときはこの限りではないと規定されています。これを合理的配慮といい、具体的には以下のようなものが該当します。
<募集・採用の配慮>:
・問題用紙を点訳・音訳すること・試験などで拡大読書器を利用できるようにすること
・試験の回答時間を延長すること
・回答方法を工夫することなど
<施設の整備、援助を行う者の配置など>:
・車いすを利用する人に合わせて、机や作業台の高さを調整すること
・文字だけでなく口頭での説明を行うこと
・口頭だけでなくわかりやすい文書・絵図を用いて説明すること
・筆談ができるようにすること
・手話通訳者・要約筆記者を配置・派遣すること
・雇用主との間で調整する相談員を置くこと
・通勤時のラッシュを避けるため勤務時間を変更することなど
なお、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときの具体例には以下のようなものがあります。
<過重な負担>
合理的配慮にも限界があり、以下の例を踏まえて、事業主に過重な負担となる場合には義務は負いません。ただし、「何もしなくてよい」ということではなく、代替措置や協議を行うことが重要です。
・企業規模・財務状況・業務への影響・実現可能性 など
(雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置)
第三十六条の二 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。
第三十六条の三 事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。
第三十六条の四 事業主は、前二条に規定する措置を講ずるに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。
第二項 事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
<募集・採用時の注意点>
採用面接や応募段階では、障害特性に配慮した次のような措置を講じなければなりません。
・面接方法の変更・試験時間の調整・支援者同席・筆談対応 など
障害の有無のみで採否を判断することは認められません。
 
⑥職場定着と雇用管理
障害者雇用においては、法定雇用率を満たすことだけでなく、障害者が継続して就労できる体制を整備することが重要です。
障害者雇用促進法では、一定数以上の障害者を雇用する事業所に対し、障害者職業生活相談員の選任を義務付けています。
(障害者職業生活相談員)
第七十九条 国及び地方公共団体の任命権者は、厚生労働省令で定める数以上の障害者(身体障害者、知的障害者及び精神障害者(厚生労働省令で定める者に限る。)に限る。以下この条及び第八十一条において同じ。)である職員(常時勤務する職員に限る。以下この項及び第八十一条第二項において同じ。)が勤務する事業所においては、その勤務する職員であって、厚生労働大臣が行う講習(以下この条において「資格認定講習」という。)を修了したものその他厚生労働省令で定める資格を有するもののうちから、厚生労働省令で定めるところにより、障害者職業生活相談員を選任し、その者にその勤務する障害者である職員の職業生活に関する相談及び指導を行わせなければならない。
第二項 事業主は、厚生労働省令で定める数以上の障害者である労働者を雇用する事業所においては、その雇用する労働者であって、資格認定講習を修了したものその他厚生労働省令で定める資格を有するもののうちから、厚生労働省令で定めるところにより、障害者職業生活相談員を選任し、その者に当該事業所に雇用されている障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導を行わせなければならない。
(法第七十九条第一項及び第二項の厚生労働省令で定める数等)
施行規則第三十八条 法第七十九条第一項及び第二項の厚生労働省令で定める数は、五人とする。
第二項 法第七十九条第一項の厚生労働省令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 第一条の四第一号に掲げる者*2
二 法第十三条第一項の適応訓練を修了し、当該適応訓練を委託された事業主に雇用されている者*3
*2:(精神障害者)
第一条の四 法第二条第六号の厚生労働省令で定める精神障害がある者(以下「精神障害者」という。)は、次に掲げる者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にあるものとする。
一 精神保健福祉法第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
二 統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)又はてんかんにかかっている者(前号に掲げる者に該当する者を除く。)
*3:
(適応訓練)
第十三条 都道府県は、必要があると認めるときは、求職者である障害者(身体障害者、知的障害者又は精神障害者に限る。次条及び第十五条第二項において同じ。)について、その能力に適合する作業の環境に適応することを容易にすることを目的として、適応訓練を行うものとする。
第二項 適応訓練は、前項に規定する作業でその環境が標準的なものであると認められるものを行う事業主に委託して実施するものとする。
障害者職業生活相談員は、障害者の職業生活全般について、
● 相談
● 指導
● 職場適応援助
● 関係機関との連携
等を行います。障害者の就業継続にとって重要な役割を担うものです。
また、障害者である短時間労働者についても、その有する能力を有効に発揮できるよう必要な措置を講ずることが求められています。
(障害者である短時間労働者の待遇に関する措置)
第八十条 事業主は、その雇用する障害者である短時間労働者が、当該事業主の雇用する労働者の所定労働時間労働すること等の希望を有する旨の申出をしたときは、当該短時間労働者に対し、その有する能力に応じた適切な待遇を行うように努めなければならない。
 
このように障害者雇用では、採用後の定着支援が重要であり、企業には、相談体制や適切な雇用管理体制の整備が求められます。
特に、障害特性に応じた業務管理や職場内の連携体制を整備することは、安定した就労継続につながる重要な要素となります。
 
⑥行政指導
・雇い入れ計画作成命令
雇い入れ計画作成命令とは、厚生労働大臣が必要と認める場合に、対象障害者である労働者数が法定雇用率未達の事業主に、法定雇用率以上となるようにするために作成を命じることができるものです。事業主は雇い入れ計画を作成または変更したときは、厚生労働大臣にこれを提出しなければなりません。
またこの計画書が、著しく不当であるときや特に必要があるときには、事業主は厚生労働大臣から計画書の変更や適正な実施に関して勧告を受ける場合があります。
なお、事業主が厚生労働大臣の勧告に従わないときは、その旨公表される場合があり、段階的な行政指導が行われることが規定されています。
(一般事業主の対象障害者の雇入れに関する計画)
第四十六条第一項 厚生労働大臣は、対象障害者の雇用を促進するため必要があると認める場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が法定雇用障害者数未満である事業主(特定組合等及び前条第一項の認定に係る特定事業主であるものを除く。以下この条及び次条において同じ。)に対して、対象障害者である労働者の数がその法定雇用障害者数以上となるようにするため、厚生労働省令で定めるところにより、対象障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずることができる。
第四項 事業主は、第一項の計画を作成したときは、厚生労働省令で定めるところにより、これを厚生労働大臣に提出しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
第五項 厚生労働大臣は、第一項の計画が著しく不適当であると認めるときは、当該計画を作成した事業主に対してその変更を勧告することができる。
第六項 厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときは、第一項の計画を作成した事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる。
対象障害者の雇い入れに関する計画についての手続きは、施行規則において以下のように規定されています。
(対象障害者の雇入れに関する計画)
施行規則第九条 法第四十六条第一項の対象障害者の雇入れに関する計画(以下第十一条までにおいて「計画」という。)には、次の事項を含むものとする。
一 計画の始期及び終期
二 雇入れを予定する労働者の数及びそのうちの対象障害者の数
三 対象障害者である労働者の雇入れを予定する事業所の名称及び所在地並びに当該事業所ごとの雇入れを予定する労働者の数及びそのうちの対象障害者の数
四 計画の終期において見込まれる労働者の総数及びそのうちの対象障害者の数
第二項 計画の作成の命令は、文書により行うものとする。
第十条 事業主は、計画を作成したときは、遅滞なく、これを管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない。
(計画の実施状況の報告)
第十一条 事業主は、計画の期間が満了したときは、第九条第一項第二号から第四号までに掲げる事項についての計画の終期における状況を、当該計画の期間が満了した日の翌日から起算して四十五日以内に、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならない。
⑦まとめ
企業における障害者雇用促進法への対応では、法定雇用率制度、障害者雇用状況報告や障害者雇用納付金制度が目を引くため、そればかりを注視しがちですが、単に人数を満たすだけでは十分とはいえません。企業には、障害者差別の禁止、合理的配慮、職場定着、環境整備、適切な雇用管理等、総合的な対応が求められます。また、障害者本人との対話を重視し、「何ができないか」ではなく、「どのような環境作り、措置を行えば障害者の能力を活かすことができるか」という視点で雇用管理を行うことが重要です。そうすることで、法の目的である「障害者の職業の安定」を達成することができるのです。
 
2026年06月04日 16:43

労働契約法第一章 総則の解説

労働契約法解説(第一章 総則)
労働契約法は、労使間のトラブルを防止するため、労働条件が定められる労働契約に関して合意の原則やその他の基本的なルールを定めた法律で、労働契約の締結、変更、終了、解雇、雇止めなどに関する原則や民事上のルールを規定し、労働者の保護と個別の労働関係の安定を目的としています。労働契約法が制定される以前は、個別労働関係紛争が生じた場合には個々の労働関連法や判例によって判断・解決されていましたが、それらは必ずしも予測可能性が高いとは言えないことや労使の認知度が低いこと等の問題があったことから、労働契約における権利義務関係を明確にする法的根拠として制定されたものです。
○労働契約法各章の概要
・第一章(総則):基本ルールを規定
労働契約に関する基本的な理念を定めるものであり、労働契約が労使の対等な立場における合意に基づくものであることを前提に、その解釈・運用に当たっては信義誠実の原則や権利濫用の禁止といった基本原則に従うべきことを明らかにしています。
・第二章(労働契約の成立及び変更):契約の始まりと変更の場面を規定
労働契約の成立および内容の変更に関する基本的枠組みを示すものであり、契約は当事者の合意によって成立・変更されることを原則としつつ、就業規則の役割を踏まえ、一定の場合にはその内容により労働条件が変更され得ることを示しています。
・第三章(労働契約の継続及び終了):働いている間と契約が終了する場面を規定
労働契約の継続中における関係の運用および終了に関する基本的枠組みを定めるものであり、使用者の人事権の行使や契約の終了について、その適法性が客観的合理性や社会通念上の相当性の観点から判断されるべきことを示しています。
・第四章(期間の定めのある労働契約を規定):有期労働契約の取扱いを規定
有期労働契約という類型に着目し、その特性に応じた規律を定めるものであり、契約期間中の関係や契約の更新・終了に関して、労働者の期待や契約の継続性に配慮した取扱いが求められることを示しています。
 
○労働契約法 第一章 総則
労働契約法第一章総則は、第一条(目的)~第五条(労働者の安全への配慮)で構成されています。
労働契約が労働者と使用者の自主的な交渉の下で成立・変更されるという合意の原則その他の労働契約に関する原則を定めています。そして、労働契約の締結当事者である労働者と使用者の定義、また、労働契約の内容の理解の促進、労働者の生命、身体等の安全を確保するための配慮について定められています。
 
○労働契約法の目的
労働契約法は、労働契約に関する民事上の基本的なルールを体系化し、明確に定めた法律です。
そしてその第一条において法の目的を以下のように定めています。
第一条(目的)
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、 又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、 合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
 
つまり、「労働者の保護」と「個別の労働関係の安定」という目的を「合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすること」によって実現し、そのために法律において「合意の原則」と「その他労働契約に関する基本的事項」を定めることとしているということです。
 
○定義
労働契約法の対象である「労働契約」の締結当事者としての「労働者」及び「使用者」 について、その定義を第二条で明らかにしています。
第二条 (定義)
この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
労働基準法の第九条、第十条において労働者と使用者が定義されていますが、労契法においても定義しています。
 
○労働契約の原則
労働契約法第三条では、労働契約における基本的な理念と共通の原則が定められています。
「労働契約の5原則」と呼ばれ、労働契約を締結・変更する際の重要な基本となるものです。
第三条 (労働契約の原則)
1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 (対等な立場による合意の原則)
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 (就業の実態に応じた均衡考慮の原則)
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 (仕事と生活の調和への配慮の原則)
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、 及び義務を履行しなければならない。 (権利行使・義務履行についての信義・誠実の原則)
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。(権利濫用の禁止の原則)
「対等な立場による合意の原則」
契約は当事者の合意によって成立・変更されることが原則です。しかし、労使関係においては交渉力や情報量の違い、つまり現実の力関係の不平等があるため低い労働条件や個人の尊厳を害する合意がなされる恐れがあります。このため、法第3条第1項において、労働契約の締結又は変更に当たっては、当事者である労使の対等な立場における合意によるべきという 「対等な立場による合意の原則」が規定されています。この規定は、労働基準法第二条第一項における「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」との規定と同趣旨です。
なお、労働契約法では、第一条(目的)の規定等でもそうであるように、随所にこの合意原則が強調されています。
 
「就業の実態に応じた均衡考慮の原則」
労働契約を締結し又は変更する場合には、差別的取扱いは適当ではなく、就業の実態に応じて、均衡を考慮すべきものとする「就業の実態に応じた均衡考慮の原則」が規定されています。
この労働条件上の差別禁止規定は、労働基準法第三条*1やパートタイム労働法第八条*2等で見受けることができます。
*1:労働基準法第三条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
*2:パートタイム労働法第八条 (不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
 
「仕事と生活の調和への配慮の原則」
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)は、近年の労働施策の主要な課題となっています。特に生活上の諸事情(出産・育児・介護等)によって継続就労が困難になったり、また、私生活を犠牲にするような働き方が問題となっています。このことから、労働契約を締結し又は変更する場合には、仕事と生活の調和に配慮すべきものとするという「仕事と生活の調和への配慮の原則」が規定されています。
 
「権利行使・義務履行についての信義・誠実の原則」
民法はその第一条第二項(基本原則)で「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」と規定しています。この民法の規定は、労働契約においても適用されるものであって、当事者が契約を遵守すること、信義に従い誠実に、権利を行使し、 及び義務を履行すべきことが求められています。
この規定は、労働基準法第二条第二項における「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」との規定と同趣旨です。
 
「権利濫用の禁止の原則」
民法はその第一条第三項(基本原則)で「権利の濫用は、これを許さない。」と規定しています。この民法の規定は、労働契約においても適用されますし、また労働関係紛争は権利濫用から派生する例が多いことから、労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないこと、つまり「権利濫用の禁止の原則」が規定されています。
なお労働契約法では、第3章において、出向、懲戒及び解雇に関する権利濫用を禁止する規定を置いていますが、それ以外の場面においては、法第3条第5項の「権利濫用の禁止の原則」 が適用されるものです。
 
○労働契約の内容の理解の促進
契約内容について労働者が十分理解しないまま労働契約を締結又は変更した場合、後にその契約内容について労働者と使用者との間において認識の齟齬が生じ、これが原因となって個別労働関係紛争が生じることがあります。対等な立場による合意の実現のためには労働条件等の契約内容について労働者が適切な理解をすることが必要であるため、労働契約法はその第四条で「労働契約の内容の理解の促進」を規定しています。
第四条(労働契約の内容の理解の促進)
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
 
労働契約の内容である労働条件については、労働基準法第15条第1項が「締結に際し」と、締結時における明示を義務付けていますが、個別労働関係紛争を防止するためには、締結時だけでなく、締結の場面以外においても明示することが必要との観点からより広い場面(締結~変更~継続)での明示を必要としたものです。
労働者の理解を深めるようにするとは、一律に定まるものではありませんが、例えば、労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく変わる場面において、使用者がそれを説明し又は労働者の求めに応じて誠実に回答すること、労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている労働条件について説明を求めた場合に使用者がその内容を説明すること等が考えられると通達されています。
 
また、労使双方に対して、労働契約の内容について、できる限り書面で確認することについて規定しています。労働契約は諾成契約(当事者の合意のみで成立する契約)ですので、必ずしも書面化を必要としません。しかし、契約内容の明確化や後の紛争の予防・回避、発生時のスムーズな解決のために有効であることから、明確に義務化しているわけではありませんが、できる限りの書面による確認を要請しているものです。
これは、労働基準法第十五条第一項及び労基法施行規則第五条第四項が契約締結時に労働時間や賃金に関する事項等について書面の交付による明示を要求していることを締結時以外の場面にも適用させるという意味で労基法を補完する役割を持つものです。
なお、書面確認事項に「期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。」と特に記載されていますが、これは、期間の定めのある労働契約が締結される際に、期間満了時において、更新の有無や更新の判断基準等があいまいであるために個別労働関係紛争が生じていることが少なくなかったことから、期間の定めのある労働契約について、その内容をできる限り書面により確認することが重要であるとの趣旨から規定されたものです。これに関連して労基法施行規則第五条の労働条件の書面交付明示事項についても「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」が追加されています。契約更新の有無や判断基準を明示すべきことを定める「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準を定める告示」を受けたものです。
 
○労働者の安全への配慮
使用者には労働者の生命・身体の安全や心身の健康が阻害されることがないように配慮する義務が課せられています。これを安全配慮義務と言い、労働契約に伴って信義則上当然に使用者が負うものとされていたことから、労働契約法の公布までは法律に規定されていませんでしたが、労働契約法はその第五条においてこの安全配慮義務を明確に規定しています。
第五条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
安全配慮義務の趣旨及び内容について、通達では次のように説明されています。
  • 趣旨
通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、判例において、労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされているが、これは、民法等の規定からは明らかになっていないところである。
このため、法第5条において、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
  • 内容
    •  法第5条は、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
    •  法第5条の「労働契約に伴い」は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、使用者は安全配慮義務を負うことを明らかにしたものである。
    •  法第5条の「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものである。
    •  法第5条の「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものである。
なお、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものである。
上記安全配慮義務の詳細を見ると、労働者の生命、身体等の安全や心身の健康を確保するためには、使用者はあらゆる場面を想定し、多くの対策を講じなければならないものと言えるでしょう。
2026年04月30日 15:43

パワーハラスメントとは?理解は防止対策に繫がります!

○パワーハラスメントとは?
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称:パワハラ防止法)に定義されている。
第三十条の二 事業主は、職場*1において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者*2の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
職場において行われる②③の要素全てを満たすものをパワーハラスメントという。
①「優越的な関係を背景とした」言動 
事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」 という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指す。
(例)
・ 職務上の地位が上位の者による言動
・ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・ 同僚又は部下からの集団によ る行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指す。
・ 業務上明らかに必要性のない言動
・ 業務の目的を大きく逸脱した言動
・ 業務を遂行するための手段として不適当な言動
・ 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
※当該言動が「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」か否かについては、様々な要素*3を総合的に考慮する必要がある。とされていることから、パワハラに該当するか否かの判断が困難なところである。
*3:当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・ 業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等
その他、当該言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要。
③「労働者の就業環境が害される」
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。
※当該言動によって「労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じている」か否かについては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で 当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。とされているが、感じ方は人それぞれであるので、これについてもパワハラに該当するか否かの判断を困難にするものである。とはいえ、常識的かつ平衡感覚を以て考慮すればよいものと思われる。
 
上記のように、パワハラに該当するか否かは①②③の要素を満たすことで認定されることから、一部判断が困難であるものもあるが、自身の言動がこれに該当しないか意識して行動することが重要である。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
と、厚労省が定めた指針に記述されているので、パワハラに該当することを恐れるあまり殊更に自重しなければならないものとはいえない。
*1:事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。(例)・出張先・業務で使用する車中・取引先との打合せの場所(接待の席含む)
*2:いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、 契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する労働者の全てをいう。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇用する労働者と同様に、防止措置の対象。
 
○パワーハラスメントの代表的な言動の類型例
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
㈠該当すると考えられる例
① 殴打、足蹴りを行うこと。
② 相手に物を投げつけること。
㈡該当しないと考えられる例
① 誤ってぶつかること。

ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
㈠該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関す る侮辱的な言動を行うことを含む。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し 行うこと。
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を 含む複数の労働者宛てに送信すること。
㈡該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改 善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
㈠該当すると考えられる例
①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること
㈡該当しないと考えられる例
① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等 の教育を実施すること。
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる ために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

ニ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
㈠該当すると考えられる例
①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
②新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
③労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
㈡該当しないと考えられる例
①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
㈠該当すると考えられる例
①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
㈡該当しないと考えられる例
①労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。 

ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
㈠該当すると考えられる例
① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
㈡該当しないと考えられる例
①労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
②労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
この点、プライバシー保護の観点から、ヘ㈠②のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要で ある。

○国の責務
パワハラ防止法
第三十条の三 第一項 国は、労働者の就業環境を害する前条第1項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
※国にはパワハラを行ってはならないことや、パワハラが発生した場合にはいろいろな問題を引き起こすことについて広報活動や啓発活動を通じて、事業主や国民一般に関心と理解を促すことが求められる。

○事業主の責務
パワハラ防止法
第三十条の二 第二項 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
第三十条の三 第二項 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
第三十条の三 第三項 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
※事業主にはパワハラに関する雇用管理上の措置をし、その措置に基づいてパワハラに関する相談や相談への対応等した労働者に対して不利益取扱いをしてはならないことや、従業員がパワハラへの関心と理解を深め、他の従業員に対する言動に必要な注意を払うことができるよう研修等を実施し、また事業主自身もパワハラに関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うことが求められています。
 
○労働者の責務
パワハラ防止法
第三十条の三 第四項 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
※従業員にもパワハラへの関心と理解を深めるために事業主から提供された研修等という機会を有効活用し、パワハラに関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うという自身の責務を果たし、事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力することが求められています。
2026年03月19日 14:30
事務所名 アクサリス社会保険労務士事務所
代表者名 三戸 和洋
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