アクサリス社会保険労務士事務所|山口県宇部市|労務の相談・診断、申請書等の作成・提出手続き代行等

山口県宇部市の社労士事務所。労務の相談・診断、申請書等の作成・提出手続き代行等、労務のことはお気軽にご相談ください

ホームブログ ≫ 労働契約法第一章 総則の解説 ≫

労働契約法第一章 総則の解説

労働契約法解説(第一章 総則)
労働契約法は、労使間のトラブルを防止するため、労働条件が定められる労働契約に関して合意の原則やその他の基本的なルールを定めた法律で、労働契約の締結、変更、終了、解雇、雇止めなどに関する原則や民事上のルールを規定し、労働者の保護と個別の労働関係の安定を目的としています。労働契約法が制定される以前は、個別労働関係紛争が生じた場合には個々の労働関連法や判例によって判断・解決されていましたが、それらは必ずしも予測可能性が高いとは言えないことや労使の認知度が低いこと等の問題があったことから、労働契約における権利義務関係を明確にする法的根拠として制定されたものです。
○労働契約法各章の概要
・第一章(総則):基本ルールを規定
労働契約に関する基本的な理念を定めるものであり、労働契約が労使の対等な立場における合意に基づくものであることを前提に、その解釈・運用に当たっては信義誠実の原則や権利濫用の禁止といった基本原則に従うべきことを明らかにしています。
・第二章(労働契約の成立及び変更):契約の始まりと変更の場面を規定
労働契約の成立および内容の変更に関する基本的枠組みを示すものであり、契約は当事者の合意によって成立・変更されることを原則としつつ、就業規則の役割を踏まえ、一定の場合にはその内容により労働条件が変更され得ることを示しています。
・第三章(労働契約の継続及び終了):働いている間と契約が終了する場面を規定
労働契約の継続中における関係の運用および終了に関する基本的枠組みを定めるものであり、使用者の人事権の行使や契約の終了について、その適法性が客観的合理性や社会通念上の相当性の観点から判断されるべきことを示しています。
・第四章(期間の定めのある労働契約を規定):有期労働契約の取扱いを規定
有期労働契約という類型に着目し、その特性に応じた規律を定めるものであり、契約期間中の関係や契約の更新・終了に関して、労働者の期待や契約の継続性に配慮した取扱いが求められることを示しています。
 
○労働契約法 第一章 総則
労働契約法第一章総則は、第一条(目的)~第五条(労働者の安全への配慮)で構成されています。
労働契約が労働者と使用者の自主的な交渉の下で成立・変更されるという合意の原則その他の労働契約に関する原則を定めています。そして、労働契約の締結当事者である労働者と使用者の定義、また、労働契約の内容の理解の促進、労働者の生命、身体等の安全を確保するための配慮について定められています。
 
○労働契約法の目的
労働契約法は、労働契約に関する民事上の基本的なルールを体系化し、明確に定めた法律です。
そしてその第一条において法の目的を以下のように定めています。
第一条(目的)
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、 又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、 合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
 
つまり、「労働者の保護」と「個別の労働関係の安定」という目的を「合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすること」によって実現し、そのために法律において「合意の原則」と「その他労働契約に関する基本的事項」を定めることとしているということです。
 
○定義
労働契約法の対象である「労働契約」の締結当事者としての「労働者」及び「使用者」 について、その定義を第二条で明らかにしています。
第二条 (定義)
この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
労働基準法の第九条、第十条において労働者と使用者が定義されていますが、労契法においても定義しています。
 
○労働契約の原則
労働契約法第三条では、労働契約における基本的な理念と共通の原則が定められています。
「労働契約の5原則」と呼ばれ、労働契約を締結・変更する際の重要な基本となるものです。
第三条 (労働契約の原則)
1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 (対等な立場による合意の原則)
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 (就業の実態に応じた均衡考慮の原則)
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 (仕事と生活の調和への配慮の原則)
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、 及び義務を履行しなければならない。 (権利行使・義務履行についての信義・誠実の原則)
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。(権利濫用の禁止の原則)
「対等な立場による合意の原則」
契約は当事者の合意によって成立・変更されることが原則です。しかし、労使関係においては交渉力や情報量の違い、つまり現実の力関係の不平等があるため低い労働条件や個人の尊厳を害する合意がなされる恐れがあります。このため、法第3条第1項において、労働契約の締結又は変更に当たっては、当事者である労使の対等な立場における合意によるべきという 「対等な立場による合意の原則」が規定されています。この規定は、労働基準法第二条第一項における「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」との規定と同趣旨です。
なお、労働契約法では、第一条(目的)の規定等でもそうであるように、随所にこの合意原則が強調されています。
 
「就業の実態に応じた均衡考慮の原則」
労働契約を締結し又は変更する場合には、差別的取扱いは適当ではなく、就業の実態に応じて、均衡を考慮すべきものとする「就業の実態に応じた均衡考慮の原則」が規定されています。
この労働条件上の差別禁止規定は、労働基準法第三条*1やパートタイム労働法第八条*2等で見受けることができます。
*1:労働基準法第三条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
*2:パートタイム労働法第八条 (不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
 
「仕事と生活の調和への配慮の原則」
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)は、近年の労働施策の主要な課題となっています。特に生活上の諸事情(出産・育児・介護等)によって継続就労が困難になったり、また、私生活を犠牲にするような働き方が問題となっています。このことから、労働契約を締結し又は変更する場合には、仕事と生活の調和に配慮すべきものとするという「仕事と生活の調和への配慮の原則」が規定されています。
 
「権利行使・義務履行についての信義・誠実の原則」
民法はその第一条第二項(基本原則)で「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」と規定しています。この民法の規定は、労働契約においても適用されるものであって、当事者が契約を遵守すること、信義に従い誠実に、権利を行使し、 及び義務を履行すべきことが求められています。
この規定は、労働基準法第二条第二項における「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」との規定と同趣旨です。
 
「権利濫用の禁止の原則」
民法はその第一条第三項(基本原則)で「権利の濫用は、これを許さない。」と規定しています。この民法の規定は、労働契約においても適用されますし、また労働関係紛争は権利濫用から派生する例が多いことから、労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないこと、つまり「権利濫用の禁止の原則」が規定されています。
なお労働契約法では、第3章において、出向、懲戒及び解雇に関する権利濫用を禁止する規定を置いていますが、それ以外の場面においては、法第3条第5項の「権利濫用の禁止の原則」 が適用されるものです。
 
○労働契約の内容の理解の促進
契約内容について労働者が十分理解しないまま労働契約を締結又は変更した場合、後にその契約内容について労働者と使用者との間において認識の齟齬が生じ、これが原因となって個別労働関係紛争が生じることがあります。対等な立場による合意の実現のためには労働条件等の契約内容について労働者が適切な理解をすることが必要であるため、労働契約法はその第四条で「労働契約の内容の理解の促進」を規定しています。
第四条(労働契約の内容の理解の促進)
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
 
労働契約の内容である労働条件については、労働基準法第15条第1項が「締結に際し」と、締結時における明示を義務付けていますが、個別労働関係紛争を防止するためには、締結時だけでなく、締結の場面以外においても明示することが必要との観点からより広い場面(締結~変更~継続)での明示を必要としたものです。
労働者の理解を深めるようにするとは、一律に定まるものではありませんが、例えば、労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく変わる場面において、使用者がそれを説明し又は労働者の求めに応じて誠実に回答すること、労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている労働条件について説明を求めた場合に使用者がその内容を説明すること等が考えられると通達されています。
 
また、労使双方に対して、労働契約の内容について、できる限り書面で確認することについて規定しています。労働契約は諾成契約(当事者の合意のみで成立する契約)ですので、必ずしも書面化を必要としません。しかし、契約内容の明確化や後の紛争の予防・回避、発生時のスムーズな解決のために有効であることから、明確に義務化しているわけではありませんが、できる限りの書面による確認を要請しているものです。
これは、労働基準法第十五条第一項及び労基法施行規則第五条第四項が契約締結時に労働時間や賃金に関する事項等について書面の交付による明示を要求していることを締結時以外の場面にも適用させるという意味で労基法を補完する役割を持つものです。
なお、書面確認事項に「期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。」と特に記載されていますが、これは、期間の定めのある労働契約が締結される際に、期間満了時において、更新の有無や更新の判断基準等があいまいであるために個別労働関係紛争が生じていることが少なくなかったことから、期間の定めのある労働契約について、その内容をできる限り書面により確認することが重要であるとの趣旨から規定されたものです。これに関連して労基法施行規則第五条の労働条件の書面交付明示事項についても「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」が追加されています。契約更新の有無や判断基準を明示すべきことを定める「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準を定める告示」を受けたものです。
 
○労働者の安全への配慮
使用者には労働者の生命・身体の安全や心身の健康が阻害されることがないように配慮する義務が課せられています。これを安全配慮義務と言い、労働契約に伴って信義則上当然に使用者が負うものとされていたことから、労働契約法の公布までは法律に規定されていませんでしたが、労働契約法はその第五条においてこの安全配慮義務を明確に規定しています。
第五条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
安全配慮義務の趣旨及び内容について、通達では次のように説明されています。
  • 趣旨
通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、判例において、労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされているが、これは、民法等の規定からは明らかになっていないところである。
このため、法第5条において、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
  • 内容
    •  法第5条は、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものである。
    •  法第5条の「労働契約に伴い」は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、使用者は安全配慮義務を負うことを明らかにしたものである。
    •  法第5条の「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものである。
    •  法第5条の「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものである。
なお、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものである。
上記安全配慮義務の詳細を見ると、労働者の生命、身体等の安全や心身の健康を確保するためには、使用者はあらゆる場面を想定し、多くの対策を講じなければならないものと言えるでしょう。
2026年04月30日 15:43
事務所名 アクサリス社会保険労務士事務所
代表者名 三戸 和洋
所在地 〒755-0004 山口県宇部市草江一丁目10-19-1
アクセス ・JR宇部線草江駅から徒歩10分
・山口宇部空港から徒歩15分
・ときわ公園入口から徒歩20分
電話番号 090-3263-4864
営業時間 9:00〜18:00
定休日 土・日・祝日

サブメニュー

モバイルサイト

アクサリス社会保険労務士事務所スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら