アクサリス社会保険労務士事務所|山口県宇部市|労務の相談・診断、申請書等の作成・提出手続き代行等

山口県宇部市の社労士事務所。労務の相談・診断、申請書等の作成・提出手続き代行等、労務のことはお気軽にご相談ください

ホームブログ ≫ 労働契約法第二章 労働契約の成立及び変更解説 ≫

労働契約法第二章 労働契約の成立及び変更解説

労働契約法(第二章 労働契約の成立及び変更)
労働契約法第二章労働契約の成立及び変更は、第六条(労働契約の成立)~第十三条(法令及び労働協約と就業規則との関係)で構成されています。
労働契約が労働者と使用者の合意により成立すること、労使の合意により労働契約の内容である労働条件を変更できることを定めています。そして、合意以外の形式として、例外的に就業規則の変更によって労働契約の内容が規律され、または変更されるという規定が定められています。
また、改正前に労基法に定められていた就業規則の最低基準効を引き継ぎ、就業規則と法令及び労働協約との関係についても規定されています。
ここでは、第六条(労働契約法の成立及び変更)と第七条(労働契約の内容と就業規則)について記載します。
 
○労働契約の成立
労働契約が、①労働者が使用者に使用されて労働(指揮命令に従った労務提供)すること、②使用者がこれに対して賃金を支払う(労務の対償としての賃金支払)ことの二つの要件について労働者と使用者が合意した場合に成立することを第六条は定めています。
民法は雇用について、「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」と規定しています。この民法の規定は労働契約に該当することから労契法第六条が規定されています。
 
第六条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
労働契約が成立するのは、①②の合意があった時です。民法によると契約は「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」とされています。このことは労働契約においても当てはまるものですので、労働契約法は①②について当事者が合意することを労働契約成立の要件としているのです。
つまり、労働者が①②を示して契約の申込みをし、これに対して使用者が承諾をする、または逆に使用者が①②を示して契約の申込みをし、これに対して労働者が承諾をすることによって労働契約は成立するものです。
「合意することによって成立する」について、労働契約は、 労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立するものである。したがって、労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものである。 また、法第六条の労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかった場合であっても、労働契約そのものは成立し得るものである。と通達されています。
すなわち、労働契約法が定める労働契約の成立要件としては、抽象的な労務提供と賃金支払で足り、例えば、使用者が労働の内容や賃金額について具体的に明示せず、後日の決定に委ねるとしても、①②について合意すれば労働契約自体は成立するということです。ただし、労働者がどのような種類・内容の仕事なのか、報酬はどの程度のものが支払われるのか不明確な状態で合意の意思表示をすることは、まず考えられないため、そのような状況で契約が成立することは、あったとしても極稀であると思われます。
 
○労働契約の内容と就業規則
労働契約の成立については、労使の合意によって成立するものですが、その合意は労働条件のすべてについてされたものではなく、それらの一部についての合意にすぎないものです。日本における労働契約では、合意した条件以外の詳細な労働条件は定められず、就業規則によって統一的に条件設定が行われてきました。つまり、就業規則の記載事項が、実際上、労働契約の内容として取り入れられるという運用がされてきました。
しかし、就業規則で定める労働条件と労働契約の内容である労働条件との法的関係については、従来は法令上明らかにされていませんでした。つまり、使用者が一方的に定める就業規則が、何故に、またいかなる条件の下に、労働契約の内容としての意義を持つようになるのかについて、法令に定められていなかったのです。
そこで労働契約法第七条において、上記従来の慣習や学説、判例等の蓄積を整理して、労働契約の成立場面における就業規則と労働契約との法的関係について規定されたものです。
第七条(労働契約の内容と就業規則)
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない。
第七条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となるための要件
第七条は、労働契約において労働条件を詳細に定めずに労働者が就職した場合において、①「合理的な労働条件が定められている就業規則」であること及び②「就業規則を労働者に周知させていた」ことという2要件を満たしている場合には、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容を補充し、「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による」という法的効果が生じることを規定したものです。
これは、労働契約の成立についての合意はあるものの、労働条件は詳細に定めていない場合であっても、就業規則で定める労働条件によって労働契約の内容を補充することにより、労働契約の内容を確定するものであるということです。
・労働者及び使用者が労働契約を締結する場合との記述について
法第七条は労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されないものです。また、就業規則が存在する事業場で使用者が就業規則の変更を行った場合については、法第十条(就業規則による労働契約の内容の変更)の問題となるものです。
・合理的な労働条件について
「合理的な労働条件」は、個々の労働条件について判断されるものであり、就業規則において合理的な労働条件を定めた部分については同条の法的効果が生じ、合理的でない労働条件を定めた部分については同条本文の法的効果が生じないこととなるものです。
「合理的な労働条件」とは、就業規則による労働条件の統一的・画一的という要請に反しないものであれば合理性ありといえ、その目的や内容が、従業員の大多数の利益に反するものでない程度に正当であれば、合理性ありと判断できる。また、合理性は「企業の人事管理上の必要性があり、労働者の権利・利益を不当に制限していなければ肯定される。との見解が示されています。
就業規則に定められている事項であっても、例えば、就業規則の制定趣旨や根本精神を宣言した規定、労使協議の手続に関する規定等労働条件でないものについては、法第七条本文によっても労働契約の内容とはなりません。
・法第七条の就業規則とは
労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様ですが、法第七条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
・周知とは
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいいます。このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、法第七条の「周知させていた」に該当するものです。
なお、労働基準法第百六条の「周知」は、労働基準法施行規則第五十二条の二により、①から③までのいずれかの方法によるべきこととされていますが、法第七条の「周知」は、これらの3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されるものです。
・労働者に周知させていたとは
その事業場の労働者及び新たに労働契約を締結する労働者に対してあらかじめ周知させていなければならないものであり、新たに労働契約を締結する労働者については、労働契約の締結と同時である場合も含まれるものです。
・労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分
法第七条は、就業規則により労働契約の内容を補充することを規定したものであることから、同条本文の規定による法的効果が生じるのは、労働契約において詳細に定められていない部分についてであり、「就業規則の内容と異なる労働条件」を合意していた部分については、同条ただし書により、法第十二条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものです。
 
○労働契約の内容の変更
労働契約の締結の際には、労使が合意することで成立することが第六条で示されています(合意の原則)が、第八条ではこの合意の原則が、さらに労働契約の内容である労働条件の変更の際にも適用されることが定められています。
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働契約においては、使用者が事実上、優越的地位にあることから労働条件を一方的に引き下げようとする動機が働くことがあり、このような労働契約の変更の場面においては、労働者の意思が蔑ろにされやすいものです。
このことに対して、第八条は労働者と使用者が「合意」するという要件を満たした場合に労働契約の内容である労働条件を変更できるという法的効果が生じることを規定したものです。
つまり、成立した契約について、一方の当事者がその一方の意思によって変更することは認められないということを規定しています。なお、条文では「その合意により、・・・変更することができる。」との記載です。これは、「労働条件を変更することは可能ですよ。ただしその場合には合意が必要ですよ。」と労働条件が労使の合意によって変更されるものであることを確認したものであって、合意の必要性を強調しています。この合意については、口頭でもできるもので、書面を交付することまでは求められていません。 
○就業規則による労働契約の内容の変更
労働契約法第八条によって、労働契約の内容である労働条件は合意によらなければ変更することができないのが原則です。このことは、その労働条件が就業規則で定められている場合も同様で、第九条は労働者と合意することなく、就業規則を変更するという手段によって、労働契約の内容である労働条件を変更することはできないことを規定しています。あくまでも合意が必要であり、就業規則の変更という単独手段による一方的変更はできないのです。
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
ただし、九条条文には「不利益に」の文言が付されているのが気になるところです。これについては、不利益な変更は合意なしに就業規則の変更によって行うことはできず、また有利な変更であっても合意なしに就業規則の変更によって行うことはできないのは同じです。前者は第九条、後者は第八条の規制を受けてできないということになります。しかし、有利な変更については、労働条件が良い方向へ変わるということですので、労働者からの異論は出ず、争う余地がありません。つまり黙示の合意という位置づけとなり、第八条の合意の原則によって合意のない就業規則の変更による変更はできないのが原則ですが、事実上は可能ということになるのです。
更に第九条は、そのただし書において、合意によることなく労働条件の不利益な変更を可能にするという「例外」があることを第十条に委ねる構造になっています。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
この第八条、第九条、第十条はややこしく、難解であるため整理しますと以下のようになります。
第八条:契約は合意で変更が原則⇒第九条:不利益変更の禁止+就業規則による一方的変更の制限⇒第十条:不利益変更の場合+変更手続きの合理性=就業規則変更による一方的変更が可能(例外)
  1. 原則:合意で変更(第8条) 2.合意なし → 就業規則だけでは不可(第9条) 3.ただし例外的に合意のない就業規則変更による変更が可能(第10条)
つまり、自由に変えられるのは「合意」がある場合(不利益・有利共)で、合意のない一方的変更はNG(有利は事実上可能)ですが、合理的手続きが行われることで例外として一方的変更がOK(不利益)となります。
第九条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・合意のない就業規則変更による労働条件の不利益変更禁止とその例外
法第八条の労働契約の変更についての「合意の原則」に従い、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできないという原則を確認的に規定したものです。
法第九条ただし書は、法第十条の場合は、法第九条本文に規定する原則の例外であることを規定したものです。
・法第九条の就業規則とは
労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様ですが、法第九条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
・法第九条の「労働者の不利益」については、個々の労働者の不利益をいうものです。
なお、第十条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・法第十条の法的効果発生の要件
「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たこと及び「就業規則の変更」が「合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定したものです。
・労働条件変更の方向
就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となる場合に適用されるものです。なお、就業規則に定められている事項であっても、労働条件でないものについては、法第十条は適用されません。
・就業規則変更の範囲
「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれます。
・「就業規則」及び「周知」とは
「就業規則」とは、労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様であるが、法第十条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれます。
法第十条の「周知」とは、例えば、
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいうものです。このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、法第十条の「周知させていた」に該当するものです。
なお、労働基準法第百六条の「周知」は、労働基準法施行規則第五十二条の二により、①から③までのいずれかの方法によるべきこととされているが、法第十条の「周知」は、これらの3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されます。
・法第十条本文の合理性判断の考慮要素
  • 法第十条本文の「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」は、就業規則の変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっての考慮要素として例示したものであり、個別具体的な事案に応じて、これらの考慮要素に該当する事実を含め就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮され、合理性判断が行われることとなるものです。
  • 法第十条本文の「労働者の受ける不利益の程度」については、実際に紛争となる事例は、就業規則の変更により個々の労働者に不利益が生じたことに起因するものであり、個々の労働者の不利益の程度をいうものです。
また、法第十条本文の「変更後の就業規則の内容の相当性」については、就業規則の変更の内容全体の相当性をいうものであり、変更後の就業規則の内容面に係る制度変更一般の状況が広く含まれるものです。
  • 法第十条本文の「労働条件の変更の必要性」は、使用者にとっての就業規則による労働条件の変更の必要性をいうものです。
  • 法第十条本文の「労働組合等との交渉の状況」は、労働組合等事業場の労働者の意思を代表するものとの交渉の経緯、結果等をいうものです。
「労働組合等」には、労働者の過半数で組織する労働組合その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意思を代表する親睦団体等労働者の意思を代表するものが広く含まれます。
  • 法第十条本文の「その他の就業規則の変更に係る事情」は、「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」を含め就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮されることをいうものです。
法第十条本文の合理性判断の考慮要素と判例法理との関係については、次のとおり(省略)同条本文は、判例法理に沿ったものです。
第四銀行事件最高裁判決においては、(省略)
したがって、法第十条の規定は判例法理に沿った内容であり、判例法理に変更を加えるものではありません。
大曲市農業協同組合事件最高裁判決においては、(省略)法第十条の規定は、この判例法理についても変更を加えるものではありません。
みちのく銀行事件最高裁判決においては、(省略)法第十条の規定は、この判例法理についても変更を加えるものではありません。
・就業規則変更の合理性の主張立証責任
就業規則の変更が法第十条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、従来どおり、使用者側が負うものです。
・法第十条の法的効果発生の時期
「当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」という法的効果が生じるのは、同条本文の要件を満たした時点であり、通常は、就業規則の変更が合理的なものであることを前提に、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させたことが客観的に認められる時点です。
・法第十条ただし書について
「就業規則の変更によっては変更されない労働条件」として合意していた部分については、第十条ただし書により、法第十二条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものです。
・法第七条ただし書について
法第7条ただし書の「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」については、将来的な労働条件について
  • 就業規則の変更により変更することを許容するもの
  • 就業規則の変更ではなく個別の合意により変更することとするもの
のいずれもがあり得ますが、①の場合には法第十条本文が適用され、②の場合には同条ただし書が適用されるものです。
 
○就業規則の変更に係る手続
就業規則による労働条件の変更については、第十条のとおり、「変更後の就業規則を労働者に周知させ」ることが手続きとしての要件とされていました。
第十一条においては、その他に労働基準法第八十九条・第九十条でも定められている内容を遵守しなければならないことを規定しています。
第十一条 (就業規則の変更に係る手続)
就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。
<労働基準法>
第八十九条(作成及び届出の義務) 
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(各号省略)
第九十条 (作成の手続)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
つまり、労働契約法第十条は労働者への周知と就業規則の合理性を要件として、就業規則の変更により労働契約の内容である労働条件を変更することができる場合について規定していますが、労働契約法第十一条は、労働基準法においても就業規則の変更の際に必要となる手続きが規定されていることからその手続きをとることが重要であることを明確にしたものです。
その手続きは①常時10人以上の労働者を使用する使用者は、変更後の就業規則を所轄労働基準監督署長に届出なければならないこと、②就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず、届出の際に、その意見を記した書面を添付しなければならないことです。
ここで特徴的なのは、就業規則の変更により労働条件を変更する場合の要件として「周知」は第十条において明確に定められているのに対して、「意見聴取・届出」は第十一条において就業規則の変更に係る手続きとしてその存在を確認している程度であることです。
それでは、労働契約法においては、「意見聴取・届出」を重要視していないのかとも思えますが、そうではないようです。
その証拠に「労働基準法第八十九条及び第九十条に規定する就業規則に関する手続は、法第十条本文の法的効果を生じさせるための要件ではないものの、就業規則の内容の合理性に資するものである。
このため、法第十一条において、就業規則の変更の手続は、労働基準法第八十九条及び第九十条の定めるところによることを規定し、それらの手続が重要であることを明らかにしたものであること。」
「労働基準法第八十九条及び第九十条の手続が履行されていることは、法第十条本文の法的効果を生じさせるための要件ではないものの、同条本文の合理性判断に際しては、就業規則の変更に係る諸事情が総合的に考慮されることから、使用者による労働基準法第八十九条及び第九十条の遵守の状況は、合理性判断に際して考慮され得るものであること。」
と、「意見聴取・届出」は就業規則の変更により労働条件を変更する場合の要件として第十条で「周知」と並んで規定されている「就業規則の内容の合理性」判断に考慮されるべき重要な手続きであることが通達されています。
 
○就業規則違反の労働契約
労働基準法では労働契約法制定まではその第九十三条(効力)において、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定されていましたが、労働契約法制定に伴って、第九十三条(労働契約との関係)は「労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第十二条の定めるところによる。」と改正されました。
そして、労働契約法はその第十二条において、改正前の労働基準法第九十三条と同一の条文で規定されました。
第十二条 (就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
このことは、労基法にも労働契約法にも同じ内容の規定を定めているということですが、労基法は労契法に移管しただけでは十分とせず、労働条件の最低基準を定めることでその向上を図ろうする労基法の趣旨を重視して労基法にも同規定を残したものです。
 
○法令及び労働協約と就業規則との関係
労働基準法第九十二条(就業規則と法令及び労働協約との関係)は「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と、就業規則と法令・労働協約の関係について規定しています。これに関連して労働契約法は、その第十三条において同趣旨の規定を設けています。
第十三条(法令及び労働協約と就業規則との関係)
就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
就業規則が法令に反してはならないこと及び労働組合と使用者との間の合意により締結された労働協約は使用者が作成する就業規則よりも優位に立つことは、法理上当然であり、就業規則は法令又は労働協約に反してはならないものです。
一方労契法では、第七条、第十条及び第十二条において、それぞれの定める一定の場面に就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることを規定しています。しかし、就業規則が法令又は労働協約に反している場合においても就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることは適当ではないことから、第十三条において、法令又は労働協約に反する就業規則の効力について規定したものです。
第十三条について、通達はその内容を以下のように説明しています。
・法第十三条は、就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合には、その労働条件は労働契約の内容とはならないことを規定したものです。
なお、法第十三条は、労働基準法第九十二条第一項と同趣旨の規定であり、就業規則と法令又は労働協約との関係を変更するものではありません。
・法第十三条の「就業規則」とは、労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労働基準法第八十九条の「就業規則」と同様であるが、法第十三条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する労働基準法第八十九条では作成が義務付けられていない就業規則も含まれるものです。
・法第十三条の「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいうものです。なお、罰則を伴う法令であるか否かは問わないもので、労働基準法以外の法令も含むものです。
・法第十三条の「労働協約」とは、労働組合法(昭和24年法律第174号)第十四条にいう「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する」合意で、「書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印したもの」をいうものです。
また、法第十三条の「労働協約に反する場合」とは、就業規則の内容が労働協約において定められた労働条件その他労働者の待遇に関する基準(規範的部分)に反する場合をいうものです。
・法第十三条の「労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については」とは、事業場の一部の労働者のみが労働組合に加入しており、労働協約の適用が事業場の一部の労働者に限られている場合には、労働協約の適用を受ける労働者(労働組合法第十七条及び第十八条により労働協約が拡張適用される労働者を含む。)に関してのみ、法第十三条が適用されることをいうものです。
2026年06月30日 12:21
事務所名 アクサリス社会保険労務士事務所
代表者名 三戸 和洋
所在地 〒755-0004 山口県宇部市草江一丁目10-19-1
アクセス ・JR宇部線草江駅から徒歩10分
・山口宇部空港から徒歩15分
・ときわ公園入口から徒歩20分
電話番号 090-3263-4864
営業時間 9:00〜18:00
定休日 土・日・祝日

サブメニュー

モバイルサイト

アクサリス社会保険労務士事務所スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら