令和7年育児介護休業法改正の概要
近年の育児介護休業法改正は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするための施策が盛り込まれる傾向にあります。令和7年の改正もこの傾向を踏襲し労働者が育児や介護をしながらも安心して働くことができる以下に挙げる制度が盛り込まれています。1.子の看護休暇の見直し
・対象となる子を小学校就学の始期に達するまで→小学校3年修了までに延長。
・取得事由①病気・けが②予防接種・健康診断に③感染症に伴う学級閉鎖④入園(入学)式、卒業式を追加。
・労使協定による継続雇用期間6ヶ月未満除外規定を廃止。除外できる労働者は週の所定労働日数が2日以下のみに。
・名称を子の看護休暇から子の看護等休暇に変更。
2.所定外労働の制限の対象拡大
・請求できる労働者の範囲が3歳未満の子を養育する労働者→小学校就学前の子を養育する労働者に拡大
3.短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加(努力義務)
・短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合にのみ、労使協定を締結し除外規定を設けた上で代替措置を講ずる場合の代替措置に従来の①育児休業に関する制度に準ずる措置②始業時刻の変更等に③テレワークを追加。
4.育児のためのテレワーク導入(努力義務)
・3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずること。
5.介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
・労使協定による継続雇用期間6ヶ月未満除外規定を廃止。除外できる労働者は週の所定労働日数が2日以下のみに。
6.介護離職防止のための事業主の雇用環境整備
・介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施・相談窓口の設置・事例の収集提供・利用促進に関する方針の周知のいずれかの措置の選択実施
7.介護離職防止のための個別の周知・意向確認
・介護に直面した旨の申出をした労働者に
介護休業制度等に関する事項の個別の周知。
介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用の個別の意向確認。
・労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)での
介護休業制度等に関する事項についての情報提供。
8.介護のためのテレワーク導入(努力義務)
・要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずること。
9.育児期の柔軟な働き方を実現するための事業主の措置
・3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関する始業時刻等の変更・テレワーク等(月10日以上)・保育施設の設置運営等・養育両立支援休暇の付与(年10日以上)・短時間勤務制度の措置のうち2つ以上の選択適用
・育児期の柔軟な働き方を実現するための措置等の選択適用とその個別の周知・制度利用意向の個別確認
10.仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
・労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、子が3歳になるまでの適切な時期に
子や家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する事項についての労働者の意向の個別聴取とその意向への配慮の実施。
11.育児休業取得状況の公表義務適用拡大
・従業員数1000人超の企業→300人超の企業に公表義務の対象を拡大。
※1~8.11令和7年4月1日施行、9.10令和7年10月1日施行
改正の内容を見ると冒頭にも記載したように、育児と介護を両立できるようにするための施策によって労働者が自身のキャリアを諦めることなく仕事を続けることができることに重点が置かれているように思います。
また、その他の施策を見ても労働者が利用できる制度があるにも関わらずそれを知らないが故にその権利を逸失してしまうことのないように事業主からの働きかけを課している内容であるように思われます。
以上を考察すると、令和7年の育児介護休業法の改正は育児介護を迎えた労働者の利用できる権利を充実させるとともに、労働者自身がその権利を知ることで育児介護生活と職業生活を計画的に両立させることができるように考慮しているものであるように思います。それと同時に事業主に対しても労働者の権利を保護・行使できるように促し、制度を利用しやすくする内容であると言えるでしょう。
2024年12月03日 14:50